研究課題/領域番号 |
19K09278
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
川島 友和 東邦大学, 医学部, 准教授 (00328402)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心臓刺激伝導系 / 臨床解剖学 / 画像解剖 / マイクロCT / 不整脈 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、科研費の前採択課題によって確立された”人体内配置が反映された刺激伝導系の3次元モデルの作製技術”をさらに発展させ、刺激伝導系の4次元形態情報化を行うことである。正常な刺激伝導系の3次元構造のみならず、生理変化軸、機能軸、や病態軸などの別軸を追加した4次元形態解析へ発展させることである。本課題の特徴として、形態が著しく異なる実験動物を用いた解析ではなく、結果を臨床に帰納しやすい人体を解析対象とすることも大変意義深いといえる。 本年度は、これまで解析したデータの取りまとめを行い、心臓刺激伝導系の体内配置や心臓配置に関して形態やサイズが正確に反映された3次元モデルの可視化に成功し、その刺激伝導系の3次元形態に関する計算解剖学的解析を実施した。さらには、多様な刺激伝導系の配置を類推するための基盤データとして実際の多様な心臓の個体差の観察結果とシミュレーション解析によって、心臓配置の生理的変化に伴う刺激伝導系の位置変化を明らかにした。この刺激伝導系の生理的変化軸を追加した3+1次元形態は、“立位心から横性心になるに従って、洞結節は後上方から右外側へ、房室伝導軸は垂直位から左水平位へ変化する”ことを明示した。これらの所見は、心筋などの心臓骨格内に埋没し、外から認識できない個体差に富む刺激伝導系を、胸郭内心臓配置や心臓外形より推察できる可能性を有しており、さらなる術後の新規不整脈回避のための基盤構築を行えたといえる。以上の結果を、論文発表により公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度と同様に今年度もコロナ渦での活動自粛によって、学会を通じて本研究課題の成果公表・公開することができなかった。そのため、研究解析やその取りまとめを中心に行った。現在の様々な医療用画像モダリティーでは、患者個々の刺激伝導系の形態を把握することができないため、まずは人体の刺激伝導系の実像形態を提示することが肝要であり、本年度はその目的を達成できたことは関係研究領域での大きな前進といえる。特に、正常心における心臓刺激伝導系の体内・心内3次元可視化や心臓の生理的位置変化を伴う刺激伝導系の変動に関する新知見が得られた。これらの新知見は、論文によって公開・出版されたことで本研究の目的の大半を達成することができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、ヒト心臓刺激伝導系のさらなる4次元変化の追求として、病態変化や加齢変化などに着目してさらなる別軸の追加を検討する。データ解析数を追加するとともに、次年度以降の新テーマや次の研究段階へ進むための予備実験データの収集にあたる。それとともに、最終年度としてこれまでの研究成果のまとめとしての発表を精力的に行っていく予定である。関連学会での研究発表を通じて、私の研究データの意義の追加や発展的理解を目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度もコロナウイルス・パンディミックの影響によって研究活動が大きく制限された。所属大学内の研究活動のみであり、外部での機器利用や意見交換などが行えなかったことで研究費の支出が抑えられたために、余剰金が生じた。次年度に繰り越される余剰金は、外部での画像撮影代、撮影・解析データ保存のための記憶媒体の購入資金、や成果公表などの追加実験と成果発表にあてる予定である。
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