研究課題/領域番号 |
19K09281
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
升本 英利 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (70645754)
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研究分担者 |
川東 正英 京都大学, 医学研究科, 助教 (00837700)
湊谷 謙司 京都大学, 医学研究科, 教授 (20393241)
武田 匡史 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (40547501)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 心臓再生医療 / 病態モデル |
研究実績の概要 |
本研究では、ヒトiPS細胞由来生体模倣性人工心臓組織に対する成熟化の制御により、難治性重症心疾患の病態を高度に模した人工組織を作製し、病態発症メカニズムを解明すること、さらに薬剤スクリーニングによる治療薬開発のための技術的な基盤を確立することを目的とする。 本年度はヒトiPS細胞からの心血管系細胞の分化誘導系の人工心臓組織作製における最適化を行った。具体的にはcanonical Wntシグナルの調節により心筋細胞および血管内皮細胞を優位に誘導する方法と、組織の強度を担保する血管壁細胞を優位に誘導する方法をそれぞれ確立し、各分化誘導法から得た細胞を適切なバランスで組み合わせることで、安定して自己拍動する人工組織を得る方法を確立した。 さらに、ヒトiPS細胞から分化誘導した心臓構成細胞群による三次元的な心臓組織シートに対する成熟化の検討を行った。動的流体刺激を細胞シート培養に加えることにより、心臓組織シートを構成する心筋細胞層厚の著名な増加を認め、それに伴う外的電気刺激およびβ刺激薬などの薬剤負荷刺激に対する良好な反応性を認めた。 また、バイオマテリアルを用いた円柱状のヒトiPS細胞由来人工心臓組織に対する動的流体刺激および電気刺激の併用に関する実験系を確立し、これらの物理的トレーニングによる心筋層の増加などの組織成熟を認めた一方、刺激による細胞障害も明らかとなり、特に長期培養に際しては組織の断裂などをきたす場合を認めた。次年度は、長期的に細胞生存を高く保ちつつ、物理的トレーニングを長期間行いうるような人工組織製造のための組織鋳型の作成および物理的トレーニングの長期生存に適したプロトコルを策定し、さらに効果的な物理的トレーニング系を確立することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工心臓組織作製に適したヒトiPS細胞からの心血管系細胞分化誘導法を確立することができた。また、心臓組織シートおよびバイオマテリアルを用いた円柱状人工心臓組織に対する流体刺激培養などの物理的トレーニングにより一定の組織成熟化を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
細胞生存を十分保ちうる物理的トレーニング培養について確立し、さらに成熟化した人工心臓組織を得ることを目指す。組織成熟化に関し、これまで行った動的流体刺激・電気刺激に加え、その他の心臓生理に応じた刺激に関し検討を加える。また、心疾患iPS細胞を用いた成熟化人工心臓組織を作製し、化合物スクリーニング系を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒトiPS細胞の培養維持および分化誘導法が予想以上に順調に確立できたため、条件検討実験に要すると考えられた経費を次年度の人工心臓組織に対する成熟化培養の条件検討に充当することとした。
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