研究課題
HER2変異・増幅に代表されるHER2異常の肺癌における頻度は5%程度であり、HER2異常肺癌へのHER2標的療法は、個別化治療として期待される。ただ、多岐にわたるHER2異常スペクトル別にHER2標的薬の感受性が異なること、HER2標的薬への獲得耐性が生じること、が予想される。本研究では、多岐にわたるHER2異常スペクトル別にHER2標的薬の効果とその獲得耐性の克服を検討することで、HER2異常肺癌に対するプレシジョン・メディシンの確立を目指した基礎的検討を実施した。初期の2年間で、複数のHER2標的薬について、肺癌・乳癌・胃癌のHER2異常細胞株を用いて、in vitro, in vivoにその効果を検討するとともに、長期暴露による薬剤耐性株を樹立し、耐性化の機序の解明と耐性株の治療法の開発を行い、複数の報告を行っている。本年度は、HER2変異陽性肺癌細胞株に対する、新規HER阻害剤タルロキソチニブの感受性を確認するとともに、HER2変異を導入したBa/F3細胞に、変異原性物質を曝露した後にタルロキソチニブで治療を行い、残存クローンをスクリーニングすることでHER2 exon C805S変異が耐性化に関与することを突き止め、報告した。また、肺扁平上皮癌患者におけるEGFR/HER2阻害剤アファチニブの有用性を検証したLUX-Lung8試験で同定された、アファチニブ感受性がある新たなHER2変異スペクトルをBa/F3細胞株に導入し、その病原性・薬剤感受性を検討し、報告した。今後も、HER2標的薬の効果と耐性化の機序と克服の検討を続け、耐性化出現の抑制法も視野にいれ、新たなHER2標的薬の治療効果と薬剤耐性についての検証を続ける予定である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Lung Cancer
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