研究実績の概要 |
胸腺上皮細胞より発生する胸腺上皮性腫瘍(TET)は進行例では難治であり、近年免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の臨床応用が期待されている。本研究の目的はTETの独特な免疫逃避機構を解明し、ICIの効果予測、有効な使用法を解明することである。 今年度は、手術により摘出し、既に当科に保存しているヒト胸腺上皮性腫瘍、正常胸腺を用いて、免疫染色による腫瘍および浸潤リンパ球(TIL)の解析を行った。腫瘍近傍のTIL、および既存のリンパ球におけるPDL-1, PD-1, CD4, CD8, FOXP3, MHCのタンパク発現を免疫組織化学染色にて解析した。TETのサブタイプごと(タイプA, AB, B1, B2, B3, C)に、各最大10例を選択している。その結果をもとにPDL-1陽性細胞率とTILのタンパク発現の関係をサブタイプごとに解析している。現時点でタイプA, ABについては有望な結果を得ているが、タイプB1, B2, B3については既存リンパ球とTIL、腫瘍細胞の分離が必要であることがわかり、追加の免疫染色を施行している。更に次世代シークエンサー(NGS)を用いたtarget sequenceに向けて、核酸の調整に着手した。まずは胸腺癌症例数例で解析予定である。また手術で切除した新鮮検体から正常胸腺、腫瘍部を別々に細断し、dissociatorにより細胞を単離してストックしている。FACS解析によるPDL-1, PD-1,CD4, CD3, CD8染色のために、末梢血リンパ球を用いた予備実験を開始し、至適条件を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既に当科に保存しているヒト胸腺上皮性腫瘍、正常胸腺、および術前血清を用いて、免疫染色による腫瘍および浸潤リンパ球(TIL)の解析を行っている。腫瘍およびその周囲組織のTILにおけるPDL-1, PD-1, CD4, CD8, FOXP3, MHCのタンパク発現を免疫組織化学染色にて調べることによりPDL-1陽性細胞率とTILの特徴を解析した。現在リンパ球と胸腺上皮細胞の区別に難渋しているが、新たな免疫染色を加えることで改善を図っている。手術で切除した新鮮検体から正常胸腺、腫瘍部を別々に細断し、dissociatorにより細胞を単離しストックしている。現在5例のストックが完成している。
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今後の研究の推進方策 |
既に当科に保存しているヒト胸腺上皮性腫瘍、正常胸腺の免疫染色の検体数を増やし、更にリンパ球と胸腺上皮細胞の区別を明確にして細かい解析を行う予定である。新鮮検体からの細胞ストックが一定数になった時点でFACSによりPDL-1, PD-1,CD4, CD3, CD8などを解析する。制御性T細胞(Treg)解析も同時に行う予定である。
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