研究課題/領域番号 |
19K09289
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
杉本 龍士郎 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (70549873)
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研究分担者 |
坂上 倫久 愛媛大学, 医学系研究科, 講師(特定教員) (20709266)
中岡 裕智 愛媛大学, 医学部, 技術員 (30795464)
岡崎 幹生 岡山大学, 大学病院, 助教 (50467750)
佐野 由文 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (60322228)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ユビキチンリガーゼ / 虚血再灌流障害 / 血管内皮細胞 / Cullin-3 / 肺移植 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
重症肺疾患にとって、肺移植手術は終末期に唯一残された必要不可欠な治療となる場合がある。しかし、これまで一時的な虚血と血液の再灌流により生じる活性酸素などが原因で肺障害を誘発することが分かっており、肺移植において多くな問題となってきた。従って肺虚血再灌流障害モデルマウスを作成し、その病態を組織レベルで解明することは、肺移植による疾患治療に繋がり、臨床医学的にも重要である。その中で我々は、Cullin-3をベースとしたユビキチンリガーゼに着目した。Cullin-3は酸化ストレス応答転写因子としてよく知られるNrf2のユビキチン化および分解制御を担うユビキチンリガーゼであり、Cullin-3の機能制御が肺虚血再灌流障害抑制の薬剤標的分子として有望である可能性が示唆された。そこで今回我々は、マウスを人工呼吸器管理し、開胸後に肺動脈を30分結紮、さらに4時間後に血液を再灌流後させることで虚血再灌流障害モデルを作成し、非結紮群のものと病理組織学的に比較検討した。本モデルにおいて虚血再灌流後4時間に従来肺虚血再灌流障害の指標とされてきた遺伝子であるearly growth response-1 (Egr-1)が虚血肺組織において著しく発現が亢進することを確認した。このような条件のもと、Cullin-3の発現レベルおよびNrf2の発現レベルをリアルタイムRT-PCRや免疫組織学的染色法を用いて確認したが、虚血再灌流障害群および非虚血再灌流障害群、ともに大きな差が認められなかった。現在、新たに作成した血管内皮細胞特異的Cullin-3コンディショナルノックアウトマウスを用いて、虚血再灌流障害を誘導する実験を実施しており、野生型およびKOマウスにおいてEgr-1の遺伝子発現量を定量的に評価することで、肺障害レベル評価・解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
血管内皮細胞特異的にCullin-3を欠損するコンディショナルノックアウトマウスの作成に時間を要したためである。しかし、本マウスは年度末に作成が完了しており、現在実験を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、野生型マウスとCullin-3 ECKOマウスにおける肺虚血再灌流障害の程度を、EGR-1をはじめとする各種炎症マーカー遺伝子の定量PCRによって間接的に評価する。また同時に、Cullin-3 ECKOマウス肺血管内皮細胞におけるNrf2の発現量についても、免疫組織学的染色法を用いて明らかにする。また、虚血再灌流障害における詳細な分子メカニズムを解析するために、Cullin-3を発現抑制した血管内皮細胞を用いて、低酸素培養を行い、Control siRNA投与群および非低酸素群と遺伝子発現プロファイルを比較する。これにより、Cullin-3-Nrf2系と低酸素シグナルとのクロストークメカニズムを明らかにする。また、昨年度に作成した、Cullin-3の結合パートナー分子のBTBドメインタンパク質とCullin-3との結合を定量的に評価するAlphaScreen法を用いて、両者の特異的結合阻害剤を探索する実験を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コンディショナルノックアウトマウスの作成に時間を要し、そのマウスを用いた虚血再灌流障害の定量評価解析が次年度まで継続することとなったため。生じた差額予算については、それらの動物実験にあてる予定としている。
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