研究課題/領域番号 |
19K09291
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
松井 啓夫 北里大学, 医学部, 助教 (00365123)
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研究分担者 |
江島 耕二 北里大学, 医学部, 准教授 (30327324)
天野 英樹 北里大学, 医学部, 准教授 (60296481)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肺線維症 / VEGFR1 / VEGFR1-TK / SDF-1 |
研究実績の概要 |
今年度は肺線維化形成の過程におけるVEGFR1シグナリングの関与の検討を行なった。 1.ブレオマイシン誘導性肺線維症モデルの作製: 野生型マウス(WT)及びVEGFR1-TK欠損マウス(VEGFR1-TKKO)にブレオマイシン (20μg/50μL)を経気管的に散布(10μg/g)し肺繊維症モデルを作製した。予備実験にて20匹モデルを作製したので、今回の実験でも問題なくモデルを作製する事ができた。2.肺の線維化の評価: 以下の①から③の実験を行なった。①肺の機能的評価:WT及びVEGFR1-TKKOで肺線維症モデルを作製後28日目に Flexiventを使用して肺の柔らかさ(コンプライアンス)と肺の弾性抵抗(エラスタンス)の評価を行なった。VEGFR1-TKKOはWTと比較し有意にエラスタンスの低下を認めたが、一方、コンプライアンスは有意に増加を認めた。②肺線維化領域の測定:単位面積当たりの線維化領域の面積は、WTと比較しVEGFR1-TKKOは有意に低下を認めた。③肺組織でのStromal cell derived factor-1(SDF-1)とVascular Endothelial Growth Factor (VEGF)のmRNA発現効果の検討:ブレオマイシン曝露後、肺でのSDF-1やVEGFの発現を経時的に定量的PCRを用いて検討を行なった。肺組織中のmRNAレベルのSDF-1の発現はブレオマイシン暴露後14,21日目でVEGFR1-TKKOはWTと比較し有意に低下を認めた。一方、VEGFの発現に関してはどの時期においてもVEGFR1-TKKOとWTで有意差を認める事ができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、ブレオマイシン誘導性肺線維症モデルを作製し、肺の線維化の評価および肺組織でのStromal cell derived factor-1(SDF-1)とVascular Endothelial Growth Factor (VEGF)のmRNA発現効果の検討する事ができたので、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
VEGFやSDF-1は、骨髄に作用し発生・分化促進因子であるStem Cell Factor (SCF)やMatrix metalloproteinase-9 (MMP-9)の発現を増強させ末梢血液にVEGFR1+細胞を動員させる作用が認められている。2020年度は①Stem cell factor (SCF)、MMP-9などの発生・分化促進因子の発現の違い②末梢血液及び肺組織でのVEGFR1+細胞の発現の違い③肺組織でのCXCR4や線維関連因子の発現の違いを認めるか否かの3つを検討することにする。 1.SCF及びMMP-9の発現効果の検討(松井啓夫)~末梢血液中のSCF及び骨髄組織中のMMP-9の前駆体であるpro-MMP-9濃度を経時的ELISAkitを用いて測定する。 2.末梢血液及び肺組織でのVEGFR1+細胞の発現の検討(松井啓夫、江島耕二)~末梢血液中のVEGFR1+細胞の発現はフローサイトメトリーを用いて確認する。また、肺組織に集積したVEGFR1+細胞は免疫組織化学を用いて確認する。 3.肺組織でのCXCR4及び線維関連因子のmRNA発現効果の検討(天野英樹)~WT及びVEGFR1-TKKOでモデル作製後、経時的にCXCR4及び線維関連因子のS100 calcium binding protein A4 (S100A4)、Type1 Collagen、Transforming Growth Factor- beta (TGF-β)のmRNA発現量を測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の研究は効率よく施行する事ができ、既存の試薬をうまく活用するなどし、予算を抑える事ができた。 次年度使用額はSCF,MPP9の発現を測定するために、ELISAキットの購入に充てる。 発現の測定は再現性を確認する必要があるため、最低2回以上の実験が必要となる。 そのほかにはフローサイトメトリーの試薬やマウスの購入費に使用する予定である。
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