研究実績の概要 |
昨年度、骨髄移植による肺の線維化の抑制効果の検討を試みたが、放射線照射装置が故障した為、移植実験を延期する必要があり、課題研究の延長の手続きを行なった。 放射線照射装置の修理が施行された後、骨髄移植による肺の線維化の抑制の検討を行なった。野生型マウス(WT)にVEGFR1TKKOマウスの骨髄を移植するとWTにWT由来の骨髄細胞を移植したマウスよりも線維化領域の面積が有意に抑制された。またWT由来の骨髄細胞からVEGFR1陽性細胞を抽出し、VEGFR1TKKOマウスに移植すると上記と同様の結果であった。逆にVEGFR1TKKOにWT骨髄由来のVEGFR1陽性細胞を移植するとVEGFR1TKKO骨髄由来のVEGFR1陽性細胞をVEGFR1TKKOに移植したマウスと比較して有意に線維化領域の面積が有意に増加した。更に肺組織にVEGFR1陽性細胞が集積していることを確認した。また定量的PCRにてTGF-beta, SDF-1,CXCR4, Collagen1の発現の増強が認められた。CXCR4中和抗体を投与するとWT骨髄由来のVEGFR1陽性細胞を移植したVEGFR1TKKOでは肺の線維化形成の抑制が認められた。しかしながら、VEGFR-1TKKO由来のVEGFR1陽性細胞を移植したWTでは肺の線維化形成はIgG投与群と比較し大きな変化は認められなかった。上記の結果からブレオマイシン誘導肺線維症モデルにおいて、VEGFR1TKシグナルが骨髄由来のVEGFR1陽性細胞を肺組織に集積することで肺の線維化が形成され、それがSDF-1/CXCR4シグナルに依存していることが示唆された。VEGFR1-TK阻害薬が今後、肺線維症に対する新たな治療薬としての可能性に期待が持てた。
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