研究課題/領域番号 |
19K09292
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
シバスンダラン カルナン 愛知医科大学, 医学部, 講師 (30557096)
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研究分担者 |
村上 秀樹 愛知医科大学, 医学部, 教授 (90303619)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 悪性胸膜中皮腫 / ゲノム編集 / NF2 / p16INK4a |
研究実績の概要 |
悪性胸膜中皮腫(MPM)はアスベスト暴露に関連し、患者数は年々増加し、2000年から2039年までの40年間でMPM患者の死亡者数は10万人を超えると予測されている。いまだに、治療が難しいことで知られているがその理由として、呼吸困難や息切れなどの自覚症状が出たり、画像で胸膜の肥厚が認められたりしたときにはすでに進行していることが多いことが挙げられる。多くは進行した状態で診断され、化学療法や免疫チェックポイント阻害薬との併用療法が行われているが、効果のみられる患者は限定的であり、十分に改善されたとは言えない。MPM患者では、分子標的薬の直接的な標的となるがん遺伝子変異の頻度は極めて少なく、がん抑制遺伝子である細胞周期制御遺伝子p16 INK4a で80%,神経線維腫症2型遺伝子NF2 で60%, BAP1で30-40%の不活化変異が高頻度に検出される。またNF2/p16 INK4a, NF2/BAP1 あるいはBAP1/p16 INK4aの組み合わせで同時に不活化している症例が多い。しかし、これらの遺伝子異常がMPM発症にどのように関わっているのかは不明であり、MPMの発症と進展に関わる分子病態の解明とそれに基づく新しい分子標的薬の発見が望まれる。2019年度申請者は、正常中皮細胞 (MeT-5A, HMOC)に対してゲノム編集を行い、NF2、p16 INK4a、BAP1の単一遺伝子欠失細胞や、(NF2-/-,p16 INK4a-/-) 二重欠失細胞を樹立した。二重欠失細胞は正常細胞に比べて細胞より成長速度や 細胞形質転換が観察された。cDNAマイクロアレイにより遺伝子発現様式を解析し、(NF2-/-,p16 INK4a-/-)二重欠失がCD24遺伝子の高発現を誘導することを見出し、CD24が上皮間葉転換に関与していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験計画通りに解析が施行できている
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子異常に基づいた阻害剤の探索と創薬向けた基礎的検討を行う。具体的には(NF2-/-,p16INK4a-/-)二重欠失や(BAP1-/-, p16INK4a-/-)二重欠失細胞を用いて 1500個の阻害剤ライブラリースクリーニングを行い、特異的な増殖抑制効果を示す薬剤の検索・同定を行う。同定された薬剤については、ヌードマウスなどの免疫不全マウスの胸膜や皮下に移植して薬剤の腫瘍形成能に与える影響を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響で物品の納品が遅れることがわかりその分の費用が次年度に回ることになったため。
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