研究実績の概要 |
新開発マイクロ流路システム(CTC-chip)によるCTC検出感度肺癌患者の循環腫瘍細胞(CTC)を効率よく捕捉・検出するために、肺癌細胞株(PC-9, NCI-H441, A549)を用いてCTC-chipによるCTC検出感度の基礎検討を行った。新開発CTC-chipは樹脂製のマイクロ流路装置で、流路を構成する無数のマイクロポストには任意の抗体を結合させることが可能である。つまり、目的とする細胞の表面抗原に結合する抗体を結合させることにより流路を流れる標的細胞がマイクロポストに捕捉される。本研究では肺癌細胞を捕捉するために上皮細胞接着因子(EpCAM)に対する抗体を流路にコーティングし、蛍光標識した細胞株を健常人全血に添加したCTCモデルをサンプルとし捕捉率(捕捉細胞数/流入細胞数)を算出した。PC-9, NCI-H441は細胞表面にEpCAMを強く発現しており捕捉率はそれぞれ99.4%, 88.8%であった。一方、EpCAMの発現が弱いA549の捕捉率は13.4%に留まった。捕捉された細胞の検出は、chip上での免疫蛍光染色にて細胞質染色(サイトケラチン)及びHoechstによる核染色及び混入するリンパ球を除外するためのCD45染色を行い、サイトケラチン陽性で核を内包かつCD45陰性の細胞をCTCと判定した。 基礎検討で得られた至適条件にて肺癌患者末梢血でのCTC検出について検討した。肺癌(または疑い)にて産業医科大学病院呼吸器・胸部外科を受診し、文書による研究参加の同意を得た患者を対象とし、末梢血中のCTCの個数をカウントした。CTCが検出された群は、検出されなかった群と比較して予後が悪い傾向を認めた。
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