研究実績の概要 |
現在までに免疫チェックポイント阻害剤投与を行った肺癌症例10例以上の投与前、投与後1ヶ月および2ヶ月の末梢血リンパ球、血清を凍結保存している。さらに症例を蓄積し、臨床効果と末梢血リンパ球の分子発現との関連をflow cytometryにて調べる。特に免疫チェックポイント阻害剤で耐性となった症例で、末梢血リンパ球の分子発現がどのように変化しているかを同定し、耐性メカニズムの解明につなげていく。 一方で、約1年前より免疫チェックポイント阻害剤は多くの場合、抗癌剤と併用で用いられるようになり、免疫チェックポイント阻害剤単剤の治療の機会が激減し、症例集積にも難渋するようになってきた。そこで、免疫チェックポイント阻害剤と抗癌剤併用について報告した論文をreviewし、免疫チェックポイント阻害剤であるPD-1抗体とPD-L1抗体の抗癌剤併用における効果の違いを明らかにし、Ichiki Y, et al. The prospect of combination therapy with immune checkpoint inhibitors and chemotherapy for squamous cell carcinoma of the lung. Trans Lung Cancer Res. 2020. (IF 5.132)に報告した。また、癌精巣抗原であるKK-LC-1特異的なT細胞受容体をγδ細胞にレトロウイルスを用いて移入し、そのfunctionを解析。Ichiki Y, et al. Development of adoptive immunotherapy with KK-LC-1 specific TCR transduced γδT cells against lung cancer cells. Cancer Sci. 2020(IF 4.966)に報告した。
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今後の研究の推進方策 |
約1年前より免疫チェックポイント阻害剤は多くの場合、抗癌剤と併用で用いられるようになり、免疫チェックポイント阻害剤単剤の治療の機会が激減し、またコロナウイルス感染拡大に伴い、症例集積にやや難渋している。そこで、免疫チェックポイント阻害剤と抗癌剤併用した肺癌症例についても、解析対象にすることも検討している。凍結保存しているリンパ球を用いて、免疫制御分子であるPD-1, CTLA-4, LAG-3, TIM-3, BTLA, TIGIT 、免疫促進分子であるCD28, ICOS, HVEN, OX40, 41BB, CD40L1の分子にそれぞれに特異的な抗体を用いて、flow cytometryを行い、発現強度と免疫チェックポイント阻害剤の臨床効果を確認する。免疫チェックポイント阻害剤治療前後の肺癌の生検組織や手術検体について、免疫制御性分子であるPD-L1, PD-L2, Galectin 9と促進性の分子であるICOS-L, LIGHT, OX40, 41BBL, CD40の発現を、免疫染色を用いて解析し、発現の程度と経時的な変化を確認する。さらに、いずれにも制御性及び促進性いずれにも関与しうるCD80,CD86の発現、経時的変化も免疫染色を用いて解析する。 また、現在当科で保存している肺癌症例50例の切除標本を用いて、PD-L1、MHC-class I,CD8などの免疫関連分子の免疫染色も行い、予後との関連も解析している。免疫チェックポイント阻害剤の耐性メカニズムの解明に繋がる解析を多角的に行い、今後の治療に貢献していきたいと考えている。
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