研究実績の概要 |
iPS細胞から様々な臓器を作り出そうという試みは多い。しかし未だ機能する肺を作れたという報告はない。実はこれらの研究には、臓器構築には内胚葉由来 の内皮細胞だけでなく、中胚葉由来の組織(間充織)も必要であるという観点が欠落している。正常な肺の発生過程では、内皮細胞層と間充織が相互作用すること で、細胞の分化と組織の形態形成を進めている。そこでiPS細胞から中胚葉へと分化誘導した細胞を、同じくiPS細胞由来の内胚葉の細胞と共培養して、より高度 に組織化され且つ新生児肺に近い組織構築を目指し、研究を進めた。 昨年度に引き続き今年度も、すでにの再現性の確認できた米国のグループからの肺様体の作製法の報告《Dye, B.R. et al. eLife 4, e05098 (2015) 》とはやや異なる、より効 率の良い肺様体の作製法の報告《Chen, Y.-W. et al. Nature Cell Biology 19, 542-549 (2017)》《Magro-Lopez, E. et al. Stem Cell Research & Therapy, 9, 186 (2018)》の再現性を確かめた。肺は内胚葉由来で前腸の腹側に生じる分枝から形成される。そこで、まず iPS 細胞を分化誘導するため、低吸着・低酸素 条件で BMP4 と Wnt3a で処理、続いて Activin を加えて内胚葉へと誘導した。生じた細胞塊をいったん解離して、接着条件で Noggin と SB431542 などで前腸 内胚葉へと誘導した。この細胞シートを再び解離させ、低吸着条件でFGF10, FGF7, BMP4 などを加えて前腸腹側へと誘導して、ある程度まで大きくなった organoid をマトリゲルに包埋して分岐の誘導を試みたが、これまでのところ十分な分岐が得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度から引き続き今年度も、すでにの再現性の確認できた米国のグループからの肺様体の作製法の報告《Dye, B.R. et al. eLife 4, e05098 (2015) 》とはやや異なる、より効 率の良い肺様体の作製法の報告《Chen, Y.-W. et al. Nature Cell Biology 19, 542-549 (2017)》《Magro-Lopez, E. et al. Stem Cell Research & Therapy, 9, 186 (2018)》の再現性を確かめた。 肺は内胚葉由来で前腸の腹側に生じる分枝から形成される。そこで、まず iPS 細胞を内胚葉へと分化形質を誘導するため、低吸着ディッシュ上で低酸素濃度 培養し、初日はRoc 阻害剤と BMP4, Wnt3a で処理、以降 4日目まで Activin-A, Roc 阻害剤, FGF2 と BMP4 で処理した。生じた細胞塊をいったんトリプシン処 理して fibronectin をコートしたディッシュ上で BMP/TGFβアンタゴニストである Noggin と SB431542 で24時間処理し、続いて IWP と SB431542 で24時間処 理して前腸腹側の分化形質を誘導した。この細胞シートを酵素処理で再び解離させ、低吸着ディッシュでFGF10, FGF7, BMP4 などを加えて20日程度培養した後、 Matrigel 中に包埋し、培養を続けることで lung organoid (肺様体)の誘導を試みたが、十分な分岐が得られていない。分化誘導の過程の各所で分化マーカーの発現率を調べて検討したところ、第一段階の内胚葉への誘導効率が期待したほど高く無いことが判明した。この段階の条件検討に時間を要し、進捗に遅れが生じている。
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