研究課題
本研究の目的は、転移性肺腫瘍に対する新たな治療戦略の構築であった。肺転移を含む遠隔転移に対する最適な治療戦略の構築のためには、転移巣における時間空間的多様性を明らかにし、個々の腫瘍における癌微小環境および免疫逃避メカニズムを描出することが必要である。本研究では肺転移巣および原発巣の手術検体における次世代シーケンシングデータを利用し、腫瘍特異的変異やcopy number variationを解析し、clonal evolutionを推測することを予定していた。またあわせてマウスを用いた動物実験も行い、頑健な評価法・解析法を確立することを予定した。2019年度には、転移性肺腫瘍の手術検体8例を研究用に凍結保存した(直腸癌2例、腎癌1例、甲状腺癌1例、膵癌1例、その他3例)。近年当科では腫瘍がより小さな段階でより低侵襲に切除する取り組みを進めている(触知不能な病変に対するVirtual-assisted lung mapping (VALMAP)併用肺切除等)。当初、腎癌と大腸癌で10例/年程度の転移性肺腫瘍の検体採取を見込んだが、1cm未満の小病変に対する手術が多く、本研究用検体採取に適した検体はわずかであり、採取症例数が伸びなかった。化学療法によって修飾されたあとの病変に対する手術が増加していることも影響した。そこで、マウス実験の準備も進めつつ、既存の肺癌検体に対する次世代シーケンスデータ解析を進めた。近年肺癌では気腔内進展(spread through air spaces ;STAS)が予後不良因子として注目されている。次世代シーケンスデータを用いたSTASと腫瘍微小環境の解析はこれまで報告がない。扁平上皮癌26例、腺癌65例についてそれぞれ解析を行い、STAS陽性例では免疫関連遺伝子群の発現が低い傾向にあることが認められた。得られた成果を世界肺癌学会や日本肺癌学会で報告した。
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Internal Medicine
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DOI: 10.2169/internalmedicine.3682-19