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2020 年度 実施状況報告書

肺扁平上皮癌患者の不良予後に関与するMaspinの分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K09304
研究機関鳥取大学

研究代表者

梅北 善久  鳥取大学, 医学部, 教授 (80244226)

研究分担者 坂部 友彦  鳥取大学, 医学部, 助教 (50639747)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード細胞浸潤 / 細胞内局在 / 細胞間接着
研究実績の概要

肺扁平上皮癌 (LSCC)の悪性化に、細胞質に局在するmaspin (cytMaspin)が関与していると考え、その分子メカニズムを明らかにするために本年度は以下の検討を実施した。

① 昨年度樹立した2種類のmaspin安定発現株 (LK2-maspin、LC-AI-maspin)から細胞内タンパク分画を抽出し、maspinタンパク発現を確認したところ、蛍光免疫組織化学の結果と一致してLK2-maspinは核と細胞質 (panMaspin)、LC-AI-maspinは細胞質 (cytMaspin)での局在を示し、細胞内局在制御機構の破綻が一部のLSCC細胞株で生じていることが示唆された。
② 2種類のLSCC細胞株 (KNS-62; panMaspin、HARA; cytMaspin)を用いて、内在性maspinの細胞内局在と細胞浸潤能の関連について検討した。KNS-62におけるpanMaspinの発現抑制では、細胞浸潤能の亢進が認められた。一方で、HARAにおけるcytMaspinの発現抑制では細胞浸潤能の低下が認められた。これらの結果は、安定発現株を用いた結果と一致しており、panMaspinはLSCCの細胞浸潤能に対して抑制的に働く一方、cytMaspinは促進的に働くことが示唆された。
③ cytMaspinによる細胞浸潤能亢進メカニズムを明らかにするために、LC-AI-maspinとLC-AI-control間での遺伝子発現解析を実施した。その結果、cytMaspinの過剰発現によって、発現増加遺伝子974個、減少遺伝子1405個を同定した。さらに発現減少遺伝子を用いたGO解析、KEGG pathway解析によって、LC-AI-maspinでは細胞間接着に関連する複数の遺伝子が減少しており、これらの遺伝子発現減少が細胞浸潤能の亢進に関与していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度の研究遂行によって、一部の肺扁平上皮癌細胞ではmaspin細胞内局在の制御機構破綻が細胞質におけるmaspin局在を誘導し、細胞浸潤能亢進および悪性化促進に関わっていること、cytMaspinの細胞浸潤能亢進には細胞間接着の低下が関与していることを示唆する結果を得ることができた。これらの知見は、maspin細胞内局在制御が癌細胞の進展に極めて重要な役割を担っていることを強く示唆しており、新規治療薬開発への応用や癌進展メカニズムのさらなる解明の一助となることが期待できることから、計画は概ね順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

① cytMaspinによる細胞浸潤能亢進の分子メカニズムを明らかにするために、LC-AI-maspinの遺伝子発現データにもとづくウエスタンブロットによってシグナル経路を同定する。

② Maspin細胞内局在制御機構を明らかにするために、maspin細胞内局在の異なる細胞株の遺伝子発現、タンパク発現をより詳細に比較する。

③ Maspin細胞浸潤能亢進および細胞内局在制御機構に関わる分子を役割を動物モデルやLSCC患者の病理標本を用いて検証する。

次年度使用額が生じた理由

細胞培養、ウエスタンブロットや共免疫沈降などの分子生物学的解析に使用する試薬およびプラスチック製品などの消耗品を購入する予定である。また、研究成果報告の為に学会参加費、論文掲載料などに使用する。

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公開日: 2021-12-27  

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