研究課題
今回我々は間葉系幹細胞(MSC)の免疫抑制効果に注目した。動物実験で肝臓や腎臓等の他臓器ではMSC投与により持続的な免疫抑制効果を示し、免疫抑制剤の減量や、免疫寛容状態も確立している(Kuo, et al. Plastic Reconst. Surg 2014)。しかし肺移植領域ではその検討は遅れている。肺移植領域での有効な幹細胞治療が確立されれば、肺移植後の拒絶反応の軽減と生存率の上昇、また長期的な免疫抑制剤による副作用を軽減でき、移植患者のQOLの改善に寄与する。当科で独自に開発したラット肺移植-幹細胞投与モデルを使用し、肺移植後に免疫抑制剤とレシピエント由来のMSCを経静脈的に投与する群と、免疫抑制剤のみを投与する群の拒絶反応を比較したところ、MSC投与群において、組織学的に拒絶反応の軽減を認めた。脂肪幹細胞投与群において、血中のHGF、IL-10等の抗炎症性サイトカインの上昇や、移植肺リンパ組織内でのc-Met(HGFレセプター)の高発現を認めた。これらの実験において、肺移植モデルにおいても同様にMSC投与によって免疫抑制効果を認め、拒絶反応が軽減できることが分かった。まずは幹細胞治療において最適な幹細胞ソースを見つけるため、レシピエント由来脂肪幹細胞、ドナー由来脂肪幹細胞、他科由来脂肪幹細胞の免疫抑制効果を比較し、明らかな有意な差は認めなかったが、より拒絶反応軽減傾向を認めたレシピエント由来幹細胞がより免疫抑制効果を発揮するが判明した。今回さらに、肺移植における最適な幹細胞の投与タイミングを見つけるため、投与タイミングの違いによる免疫抑制効果を検証し、最適な投与タイミングを決定し、より効果的な独自の治療プロトコールを決定する。そのプロトコールを踏まえて、長期生存モデルを作製し、慢性拒絶の抑制について検討していき、免疫寛容の誘導が可能かどうかを検証する。
すべて 2022 2021
すべて 学会発表 (2件)