| 研究課題/領域番号 |
19K09312
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| 研究機関 | 北里大学 |
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研究代表者 |
佐藤 之俊 北里大学, 医学部, 教授 (90321637)
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| 研究分担者 |
三窪 将史 北里大学, 医学部, 助教 (90723940)
内藤 雅仁 北里大学, 医学部, 助教 (50648730)
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| 研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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| キーワード | 肺癌 / 微小乳頭状 / 細胞株 / 転移 / 腺癌 |
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| 研究実績の概要 |
肺腺癌の中でも微小乳頭状を呈する腺癌(MPA)は,早期においてもリンパ節転移を起こし易く予後不良である.しかし研究材料に乏しく,基礎研究は十分になされていない. 申請者らはMPAの腫瘍組織から樹立した細胞株（KU-Lu-MPPt3）がMPAの病理所見と類似点を認める事を既に報告している. (Cancer Res. Clin.Oncol.2018)
肺癌細胞の多くが培養すると付着形態を取るのに対し,KU-Lu-MPPt3細胞は,付着する細胞(AD細胞)と浮遊しながら増殖する細胞 (SUS細胞)が併存するという特徴を持つ.さらに,この2つの形態を持つ細胞はそれぞれの形態へ変化することが出来る.申請者らはこのSUS細胞が転移を起こし易い微小乳頭成分の主体ではないかと仮定し,この2種類の細胞を別々に単離培養することで,両者における遺伝子発現の差異を解析して,浮遊形態を規定する遺伝子を同定し,それらと癌の転移・浸潤の関連性を検討した.
発現に差異が見られた遺伝子のうち,AD細胞と比べてSUS細胞で発現が高いがん幹細胞マーカーとして知られる分子に着目して解析を行った.その結果, がん幹細胞マーカーの選択的スプライシングによるバリアントアイソフォームが,ADとSUS細胞で大きく異なることが判明した.さらに,AD細胞では接着に関わるFAKのリン酸化亢進を, SUS細胞では代謝や増殖に関わるAktのリン酸化亢進を認めた.今後は,AD細胞と比較してSUSで発現の高かったがん幹細胞マーカーである分子をAD細胞に遺伝子導入し,恒常的に発現する安定発現細胞株を樹立したのちに,特定分子をノックダウンすることで,機能や形態に変化が起こるか検討を行う.
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度はAD細胞とSUS細胞で差異の大きかった遺伝子のCD36とAQP1に着目して解析を進めたが,これらの遺伝子を強制発現させても癌の予後因子やマーカーとなる遺伝子に変化がなかったため,本年度は新たなターゲットに着目して解析を進めた.着目したがん幹細胞マーカーは,AD細胞と比べてSUS細胞で発現が高く,さらに選択的スプライシングによるバリアントアイソフォームがADとSUS細胞で大きく異なることが判明したため,クローニングを行ってバリアントアイソフォームの詳細を解析した.これらの解析結果から判明した特定のバリアントと微小乳頭成分の悪性度の関連について解析を進めた.
細胞接着に関わる解析では,細胞が付着から浮遊の両方向へ形態を変化させることでAktおよびFAKの発現を変化させており,SUS細胞は接着するためにAktのリン酸化が必要であるが,接着する過程でFAKのリン酸化が亢進し,その一方でAktのリン酸化を抑制していることが判明した.
動物モデルの作製は細胞株の肺への直接接種から経気道投与に変更して行っているが,気管切開した箇所から腫瘍が漏れ出て気道を閉塞してしまうことから,さらなる改善が必要である.以上の事からおおむね順調に進展していると判断した.
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| 今後の研究の推進方策 |
今後はAD細胞とSUS細胞で差異のあったがん幹細胞マーカーである分子の機能解析を進める.AD細胞にがん幹細胞マーカーの分子を遺伝子導入して恒常的に発現する安定発現細胞株を樹立する.この株を用いて特定分子をノックダウンすることで,機能や形態に変化が生じるか検討を行う.具体的には抗癌剤感受性試験を行って特定分子が薬剤耐性に影響を及ぼすか否かを検討する.また,同時に増殖能の比較試験を行う.現在,安定発現細胞株は特定遺伝子の発現が低かったA549（市販の肺腺癌細胞株）で作製に成功したが,AD細胞ではA549と同条件では作製出来なかった為,条件を変えて試みる.
動物モデルの作製は,経気道投与の際に動物の体勢や細胞の注入に使用するカニューレのサイズを変更して試みる.
また,これらの解析と同時進行して,新たなヒト腫瘍組織由来の微小乳頭状肺腺癌細胞株の樹立を試みる.
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| 次年度使用額が生じた理由 |
本年度は遺伝子解析や接着アッセイ等,多くの解析と安定発現細胞株の樹立を試みた為,消耗品や試薬を予定額を越えて購入した.そのため,前倒し請求を行った.その中で,少額の次年度使用額が生じた.
次年度使用額は、次年度の助成金と併せて安定発現細胞株と新規ヒト腫瘍組織由来の細胞株樹立に必要な消耗品の購入と抗癌剤感受性試験,遺伝子解析,転移・浸潤能解析に必要な試薬,物品の購入に充てる。
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