研究課題/領域番号 |
19K09320
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
田口 奈津子 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (80282474)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 呼吸困難 / オピオイド / 息こらえ時間 / 疼痛閾値 |
研究実績の概要 |
本邦の主要な末期疾患である、がん終末期、呼吸不全末期、重症心不全すべてにおける共通症状として呼吸困難感がある。本症状の緩和は高齢化社会を迎えようとしている本邦においては重要な課題である。呼吸困難に対するオピオイド投与はがん患者では確立した方法ではあるものの鎮痛目的で用いる場合と異なり、呼吸抑制への懸念からその使用は控えめであり、さらに非がん患者ではいまだ日常臨床とはなっていない。今回我々は、症状緩和におけるオピオイド投与を安全かつ有効に行うため、新しい指標として、疼痛域値、息こらえ域値を提案しその確立を目標とし研究をおこなっている。 オピオイド投与により呼吸困難感緩和効果が得られるのと並行して呼吸数減少をはじめとするいわゆる呼吸抑制作用はある程度必発である。多くの呼吸抑制は夜間を中心とした睡眠時に起こることが知られている。安全な投与にはこの呼吸抑制の程度を事前に測定できることが望ましい。個々の患者の感受性や、オピオイド耐性形成の有無を疼痛域値、息こらえ域値で測定することを試みる。 エンドポイントは夜間の睡眠異常であり、われわれはこのためベッド脚下に設置したセンサーにより呼吸パターン、呼吸数等を非接触、非侵襲的かつ連続的に測定する手法を確立した。日中に測定した上記指標と夜間の睡眠異常を 現在はがん終末期患者で、疼痛コントロール目的にオピオイドを投与している患者において、睡眠異常、睡眠中の呼吸パターン異常の発生について観察研究を継続している。 オピオイド使用量増加にともない、夜間の呼吸数は若干ではあるが優位に減少し、様々な呼吸パターンが出現していることが観察できている。これら呼吸パターンの出現にはオピオイド、睡眠目的の薬剤、または病気の進行などの様々な要因が考えられる。 これらの患者背景と呼吸のパターン解析が次年度にむけて進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
夜間睡眠中の呼吸異常の観察を、個々の症例で個別に評価することが必要だがその解析手法確立に若干時間を要したことから、実際の疼痛域値、息堪え域値等の測定とデータを対照することができていない。ある程度手作業でデータを解析していくことで対応予定である。次年度には手法を確立し、実際の測定を開始する。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、研究対象を拡大し 現在緩和ケア病棟入院患者のみ対象としている測定を、同様のがん治療中の PS0~1患者の測定にひろげ、夜間の睡眠異常の観察結果を比較し薬剤、病状進行などが原因となる呼吸異常を検討する。 令和2年度は、これまでの測定方法の確立を経て痛み域値、息堪え域値測定結果と患者の夜間睡眠異常の観察を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析手法の確立に時間を要したことから実際の研究開始が遅れ、他病棟への拡大が遅延している。拡大時購入予定であった追加のベッドセンサー等の費用および国際学会参加目的に計上した予算が前年度残額である。しかし本年度拡大に向けて倫理委員会の書類は提出済みであり、認可とともに開始予定である。したがってベッドセンサー(200千x2)、データ入力用ノートパソコン(60千x2)、解析用統計ソフト (80千)は本年度残額を次年度予算として計上する。
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