研究課題/領域番号 |
19K09322
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
廣田 弘毅 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (30218854)
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研究分担者 |
佐々木 利佳 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (10345572)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 扁桃体 / 海馬 / 全身麻酔薬 / 静脈麻酔薬 / ぜいたく環境 |
研究実績の概要 |
臨床麻酔において,術前の不安や恐怖心により,麻酔作用が不安定になり覚醒遅延や術中覚醒の危険性が高まることが経験的に知られているが.その脳科学的メカニズムは不明である.本研究によりこのメカニズムが解明されれば,臨床における安全な麻酔方法の確立・術中覚醒の予防等に寄与するので,患者に利益がもたらされると考え当該研究を計画した. 扁桃体は情動の中枢であることから,海馬/扁桃体スライスに及ぼす静脈麻酔薬および揮発性麻酔薬の作用を比較検討して,扁桃体による海馬シナプス伝達の修飾効果を検討している.これまで我々の研究室では,さまざまな病態による全身麻酔作用の修飾機序(加齢,認知症,糖尿病など)を明らかにしてきたが,これらの研究手法を当該研究にも適用した. ラット扁桃体/海馬の神経回路モデルを用い,ぜいたく環境(EE)が静脈麻酔薬作用に及ぼす効果について検討した.3週齢の雄性Wistarラットを2群に分け,標準環境(SE群)およびぜいたく環境(EE群)で8~12週間飼育した.ラットをセボフルラン麻酔し扁桃体/海馬スライスを作製し,興奮性および抑制性シナプス伝達から構成される神経回路モデルを作製した.両群において静脈麻酔薬プロポフォールは濃度依存性に抑制性シナプス伝達を促進し,その抑制程度はEE群がSE群に対して有意に亢進していた.8~12週間のEEは扁桃体/海馬間の神経結合を豊かにし,全身麻酔薬の作用を増強すると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により,実験および情報収集ができなかったため計画に遅延が生じている.
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今後の研究の推進方策 |
ぜいたく環境モデルは確立できたので,さまざまな全身麻酔薬作用に及ぼすぜいたく環境の就職効果を検討してゆく.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により,実験および情報収集に遅延が生じたため.
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備考 |
1846年ボストンのマサチューセッツ総合病院において,Mortonにより世界で初めてエーテルによる全身麻酔が施行されてから160年以上が経過したが,全身麻酔のメカニズムには依然不明な点が多い.しかしながら,近年ではパッチクランプ法や遺伝子工学などの分子生物学的手法を駆使した解析も進み,麻酔の迷宮の一端が解き明かされようとしている.麻酔薬の作用機序仮説について,我々の研究成果を中心に概説したい.
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