研究課題
維筋痛症(FM) や筋・筋膜性疼痛(MPS)は、「慢性的な筋の痛み」を主症状とする難治性疾患で、有効な治療法・治療薬が乏しいことから患者の日常生活やQOLを著しく低下させる。日本におけるFMの患者数は人口の約1.7%(200万人)と推計される。また「肩こりや腰痛」のようなMPSは厚生労働省による国民生活基礎調査において自覚症状のツートップを長らく独占しており、加齢により増加するため、超高齢化社会に直面した日本をはじめとする先進国において早急に取り組むべき最重要課題である。申請者らはこれまでに、FMを実験モデルとして、慢性難治性筋痛疾患の末梢神経機構の一端を解明してきたが、脊髄機構を含む中枢神経機構に関する研究は皆無に近い。そこで、本研究ではまず、筋からの痛覚入力を受ける脊髄後角表層細胞の解析のため、新規in vivoパッチクランプ法を世界に先駆け開発を目指し、未だ国内外で全く手が付けられていない筋痛覚過敏に関わる脊髄機構解明に焦点を当て、脊髄情報伝達回路の可塑的変化を明らかにすることを目的とした。本年度は、最初のステップとして筋からの痛覚入力を受ける脊髄後角表層細胞からのin vivo細胞外記録を行い筋への定量刺激に対する応答解析を行った。その結果、筋からの痛覚入力を受ける脊髄後角表層細胞からの記録には成功し、筋への定量刺激に対し刺激強度依存的に発火頻度が増加することを見出した。次に、新規in vivoパッチクランプ法の開発に着手し現在数例ではあるがその記録と解析に成功している。これらの成果は、今年度行われたThe 2nd Pain and Amygdala Symposium、日本神経科学会、日本疼痛学会(優秀ポスター賞受賞)などの学会で発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究で、覚入力を受ける脊髄後角表層細胞からのin vivo細胞外記録を行い筋への定量刺激に対する応答解析を行った。その結果、筋からの痛覚入力を受ける脊髄後角表層細胞からの記録には成功し、筋への定量刺激に対し刺激強度依存的に発火頻度が増加することを見出した。次に、新規in vivoパッチクランプ法の開発に着手し現在数例ではあるがその記録と解析に成功した。今回の結果を踏まえ、現在、筋刺激に対する脊髄後角表層でのシナプス伝達機構の解析に着手している。これらの結果は、The 2nd Pain and Amygdala Symposium、日本神経科学会、日本疼痛学会(優秀ポスター賞受賞)などで発表を行った。以上のことから、おおむね研究計画通りに研究が出来ていることから順調に進展していると考えられる。
現在行っている筋刺激に対する脊髄後角表層でのシナプス伝達機構の解析をさらに進める。同時に、筋痛覚受容ニューロンの同定を組織形態学的に行う予定である。また、線維筋痛症モデルラットを用い、病態時における脊髄後角のシナプスの可塑的変化の解析にも着手していく予定である。
R1年度前半は筋からの痛覚入力を受ける脊髄後角表層細胞からの記録には成功し、筋への定量刺激に対し刺激強度依存的に発火頻度が増加することを見出したが、記録した細胞数に様々な特徴がありまずその特徴を電気生理学的に分類する作業を行ったため既存の機器・試薬で推敲することが出来た。そのため予定していた機器や試薬の購入をR2年度に繰り越すこととし予定していた筋痛覚受容ニューロンの同定を免疫染色等の手法を用いて組織形態学的に行う予定である。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (31件) (うち国際学会 9件、 招待講演 2件) 備考 (2件)
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