研究課題/領域番号 |
19K09325
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西脇 公俊 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10189326)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 神経原生肺水腫 / 神経ペプチドY / 細胞透過性 / ラット脳死モデル / 気管支肺胞洗浄液 |
研究実績の概要 |
我々は、ラット神経付き肺潅流標本およびラットフィブリン誘発神経原性肺水腫モデルを用いた検討において、肺交感神経終末でカテコールアミンと共存する神経ペプチドY(NPY)による神経性調節が細胞透過性に関与することを明らかにした。しかしながら、NPYの作用機序については未だ不明なままである。本研究の目的は、in vitro肺細胞透過性評価系を確立し、NPYの作用機序を細胞レベルで明らかにすること、また、「脳死モデルでの神経原生肺水腫に関わる神経ペプチドの同定とVEGFの関与」として、げっ歯類を用いたin vivo脳死誘発肺水腫モデルを確立し、NPYやVEGFの関与の有無を検討するとともに、同モデルを用いて肺水腫の発症を抑制する薬剤を探索することである。本年度は、ヒト気管支上皮細胞株Calu-3を用いたin vitro肺細胞透過性評価系の再評価とin vivo脳死誘発肺水腫モデルの構築を行った。 In vitro肺細胞透過性評価は、これまでミリポア製の3umの孔を持つセルカルチャーインサートを用いたCalu-3細胞単層で行なっていた。しかしながら、世界的な情勢の変化に伴い、海外からの輸入による同セルカルチャーインサートの入手が困難になった。そこで、入手可能であった他メーカーの同類品に変更してアッセイ系の再構築を試みたが、Calu-3細胞単層の形成時間のバラツキが大きく、NPYによる細胞透過性も観察されなかった。この結果を受け、新規にin vitro肺細胞透過性評価を構築することにした。 In vivo脳死誘発肺水腫モデルは、ラット頭蓋内にバルーンカテーテルを挿入し、バルーン内に生理食塩水を注入することにより頭蓋内圧を上昇させ、脳幹部にヘルニアを起こすことにより作製した。同モデルからの気管支肺胞洗浄液採取法を確立し、サンプル中の総蛋白を含む生化学的検査法を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、in vitro肺細胞透過性評価で使用する器具入手に困難が生じ、実験を実施することができない状況となった。入手可能な類似品でアッセイ系を作製したが、以前と同様の系とはならなかった。そのため、当初予定していたマクロファージ様細胞と肺微小血管内皮細胞を含めた3つの細胞を共培養する肺モデルの構築、NPY添加したマクロファージ様細胞の培養上清をCalu-3アッセイ系に添加することによるNPYの細胞透過性亢進作用の再評価が実施できなかったばかりでなく、in vitro肺細胞透過性評価系を改めて構築しなければならない状況となった。 また、「脳死モデルでの神経原生肺水腫に関わる神経ペプチドの同定とVEGFの関与」についての検討では、ラット脳死モデルを安定して作製できるようになった。同モデルから気管支肺胞洗浄液を採取する方法も習得した。しかしながら、同モデルラットにおける評価項目となる、摘出肺のWet/Dry Ratioの測定法の確立、気管支肺胞洗浄液中濃度を測定する物質(NPY、VEGF、サイトカイン類、総蛋白等)の選定、気管内薬物投与法の確立など、未だ検討すべき事項が多く残っているため、進捗はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
In vitro検討課題では、肺細胞透過性評価系の再構築で使用する細胞にCalu-3ではなく、ラット肺から単離した2型肺胞上皮細胞から1型肺胞上皮細胞に分化した初代細胞を用いる。過去の報告から、気管支上皮細胞株であるCalu-3で形成される単層の電気抵抗性は上記初代培養細胞で形成された単層よりも数倍高く、Calu-3で作製した単層では肺胞での細胞透過性を模することは厳しい可能性は把握していた。現状使用できるセルカルチャーインサートでのCalu-3単層形成があまりにも不安定であるため、再構築の機会に、使用する細胞を変更する決断をした。速やかにラットからの2型肺胞上皮細胞単離方法を確立し、使用する培地、細胞播種密度、細胞培養期間などの検討・決定する。その後、ラット肺胞上皮細胞単層にNPYを添加し、NPYの細胞透過性亢進作用の再評価ならびにNPYのメカニズム解析を行う。 In vivo検討課題では、脳死モデルラット摘出肺のWet/Dry Ratioの測定法の確立、NPY等の気管支肺胞洗浄液中濃度を測定する物質の選定、気管内薬物投与法の確立、肺傷害の組織学的解析法の確立を試みる。これら検討の完了後には、脳死誘発肺傷害に対するNPY受容体アンタゴニストの抑制効果の有無を評価すると共に、他の抑制効果を有する薬剤の探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
In vitro肺細胞透過性評価系で使用する器具が入手困難となり、進捗が遅れ、未達成の検討事項が多くなった。研究期間延長とともに次年度使用額が発生した。現在未達成の検討事項を含め、今後の研究推進方針に則ってin vitro(セルカルチャーインサート、培地、血清、試薬等の購入)とin vivo(動物、試薬、アッセイキット、生化学分析装置用カートリッジ、抗体等の購入)の実験を行うことにより、交付額相当の経費が必要となる。
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