研究課題/領域番号 |
19K09333
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
岸岡 史郎 和歌山県立医科大学, 医学部, 学長特命教員(特別顧問) (60137255)
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研究分担者 |
木口 倫一 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (90433341)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マクロファージ / 神経障害性疼痛 / DREADD / 坐骨神経 / 神経炎症 / 化学療法薬 / アロディニア |
研究実績の概要 |
研究代表者らはこれまでに、傷害末梢神経に浸潤する炎症性マクロファージが神経障害性疼痛の末梢性責任細胞であることを提唱してきた。本研究の目的は、新しい遺伝子改変マウスを用いて炎症性マクロファージを特異的に調節し、神経障害性疼痛の病態分子基盤を担うマクロファージの詳細な役割を解明することである。マクロファージのマーカー分子であるCX3CR1陽性細胞のみを特異的に調節できる化学遺伝学的手法(DREADD)を確立するため、R26-LSL-hM4Di-DREADDマウスとCX3CR1-Creマウスを交配させ、CX3CR1陽性細胞において変異型ヒトムスカリン受容体4(hM4Di)を発現するマウスを作製した。 CX3CR1-hM4Diマウスに坐骨神経部分結紮(PSL)を施すと、傷害坐骨神経においてhM4Diを発現するマクロファージの浸潤が認められた。CX3CR1-hM4DiマウスにおけるPSL誘発性機械的アロディニアは、hM4Diの特異的リガンドであるclozapine-N-oxide(CNO)をPSL7日後に全身投与すると有意に改善し、その効果は3日以上持続していた。またPSL29日後にCNOを同様に投与しても、機械的アロディニアの改善効果が認められた。さらに化学療法薬パクリタキセルの反復投与により生じる誘発性機械的アロディニアも、CX3CR1-Gi-DREADDによって顕著に抑制された。 本年度は、Gi-DREADDを用いた新しいマクロファージ調節法を確立するとともに、神経傷害ならびに化学療法誘発性神経障害性疼痛におけるCX3CR1陽性細胞の機能的重要性を実証することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新しいマウスを用いたマクロファージ調節法を確立するととともに、複数の病態モデルを用いてその機能的意義についても立証することができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿って、Gi-のみならずGq-DREADDを用いたマクロファージの調節法を確立し、痛覚伝達に及ぼすマクロファージの役割を実証する。種々の異なる神経障害性疼痛モデルにおけるマクロファージ依存的な病態分子基盤を明らかにするとともに、それらを標的とした新規治療戦略について検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
R1年度の未使用額は端数であり、次年度に繰り越して使用する方が有意義であると判断したため。R2年度の交付額と合算して消耗品費に充てる計画である。
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