研究課題
研究代表者らはこれまでに、傷害末梢神経に浸潤する炎症性マクロファージが神経障害性疼痛の末梢性責任細胞であることを提唱してきた。本研究の目的は、新しい遺伝子改変マウスを用いて炎症性マクロファージを特異的に調節し、神経障害性疼痛の病態分子基盤を担うマクロファージの役割を解明することである。マクロファージのマーカー分子であるCx3cr1プロモーター制御下でCreを発現する系を用い、Cx3cr1陽性細胞において変位型ヒトムスカリン受容体3(hM3Dq)または4(hM4Di)を発現するマウスを作製した。坐骨神経傷害や抗がん薬誘発性の機械的アロディニアは、hM4Diマウスを用いてGi-DREADDを全身性に誘導することによっていずれも抑制された。対照的に、hM3Dqマウスの坐骨神経領域にGq-DREADDを局所的に誘導すると、機械的刺激に対する逃避反応閾値の低下(アロディニア)が認められた。また薬理学的な検討を行うため、坐骨神経傷害に加えて高脂肪食に給餌による2型糖尿病性神経障害性疼痛モデルマウスを作製し、マクロファージの活性化が機械的にアロディニアに及ぼす影響を評価した。マクロファージの枯渇薬や特異的毒素を投与すると、機械的アロディニアが抑制されることが示された。さらに代表者らがマクロファージ抑制薬としてすでに見出しているTC-2559などのα4β2ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニストを坐骨神経領域や全身性に投与すると、病態の進行度に関わらず、機械的アロディニアが抑制されることを明らかにした。本研究を通じて、末梢神経における炎症性マクロファージが様々な成因の神経障害性疼痛に共通して重要であることが明らかになり、新しい治療標的として有望である可能性が示唆された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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