本研究によりトリヨードチロニン(T3)の投与がマウス脳虚血再潅流後の海馬神経細胞死を増悪させることが判明した。また、このとき海馬GFAPおよびIba1のタンパク質発現量がT3投与により用量依存的に増加することがわかった。つまり、T3は脳虚血再潅流後の海馬における炎症反応を亢進させ、神経細胞死の発生を増悪していることを明らかにした。さらに、海馬TGF-β1mRNA発現を解析したところ、T3投与により用量依存的にmRNAの発現量が低下していることがわかった。つまり、TGF-β1遺伝子発現の抑制による神経保護効果の低下が、T3投与による脳虚血再潅流障害の悪化の原因のひとつである可能性が示唆された。
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