研究課題/領域番号 |
19K09337
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
渡邊 真理子 東海大学, 医学部, 講師 (60609220)
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研究分担者 |
吉川 正信 東海大学, 医学部, 准教授 (90276791)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ケタミン / 唾液分泌 / 唾液腺マイクロダイアリシス |
研究実績の概要 |
N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬であるケタミンは唾液分泌を過多にするが、その機序は不明である。近年、ケタミンがα-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メソオキサゾール-4-プロピオン酸(AMPA)受容体を活性化しセロトニンを遊離すると報告された。消化器のセロトニン研究において、消化管内在のコリン作動性神経上のセロトニン5-HT3および5-HT4受容体刺激はアセチルコリン分泌量を増加することが明らかにされている。本研究では、ケタミンが唾液分泌に与える影響を唾液腺in vivoマイクロダイアリシス法などを用いて解析することを目的とした。ケタミン麻酔とイソフルラン麻酔下においてPilocarpineを投与し唾液分泌量を測定した結果、ケタミン投与により唾液分泌量が増加すること、イソフルラン麻酔下でケタミン暴露後Pilocarpineをを投与し唾液分泌量を測定した結果、イソフルラン単独麻酔と比べて唾液分泌量が増加すること確認した。テトロドトキシン還流あるいはカルシウムフリー液還流によりアセチルコリン遊離量が一過性に減少すること、鼓策神経電気刺激あるいは高カリウムリンゲル液還流によりアセチルコリン遊離量が一過性に増加すること、などから唾液腺in vivo マイクロダイアリシス法により連続的に採取されたアセチルコリン濃度が唾液腺局所における副交感神経活動を反映していることを明らかにした。また、同時に唾液分泌量を測定するため主導管開口部に挿入したPEチューブ内の唾液移動を動画撮影し、唾液分泌量、分泌速度をリアルタイムで観察し、測定するシステムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ケタミンによりピロカルピン刺激下での唾液分泌量が増加すること、唾液腺in vivo マイクロダイアリシス法により連続的に採取されたアセチルコリン濃度が唾液腺局所における副交感神経活動を反映していることなどを確認した。唾液腺マイクロダイアリシス法と唾液分泌量をリアルタイムで観察し、評価するシステムを確立することが出来た。計画した研究タイムスケジュールにほぼ従って進捗している。マイクロダイアリシス法を実施している麻酔下の動物での唾液分泌量の測定法を新たに構築することが出来た。このシステムにより、唾液分泌量変化について詳細な検討が行えるようになったと考える。以上の理由より、当初の実施計画におおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
顎下腺灌流標本を用い、ムスカリン受容体刺激(Carbachol)、α1アドレナリン受容体刺激(Phenylephrine)またはβ2アドレナリン受容体刺激(Salbutamol)下でケタミンを動脈カニューレよりRinger液で灌流し、唾液量を測定する予定である。また、唾液分泌に関する上位中枢に対する作用の検討を行うため、ケタミンをラット脳室内に投与し顎下腺還流標本と同様な実験を実施する予定である。また、唾液腺におけるケタミンの唾液分泌に対する作用を検討する予定である。すなわちケタミン投与をマイクロダイアリシス法により投与し、唾液腺細胞外液中の神経伝達物質分泌量変化、唾液分泌量変化についてリアルタイムに測定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度にケタミン投与による唾液腺マイクロダイアリシスによるノルエピネフリン遊離量の変化について解析する予定であったが、計画を変更し全てのサンプルをアセチルコリン遊離量解析に使用することとしたため、未使用額が生じた。2020年度にケタミン投与による唾液腺内神経由来ノルエピネフリン遊離量の変化についても検討する予定である。
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