研究課題/領域番号 |
19K09339
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
松尾 禎之 関西医科大学, 医学部, 講師 (50447926)
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研究分担者 |
広田 喜一 関西医科大学, 医学部, 教授 (00283606)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 炎症 / 代謝 / マクロファージ / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
炎症応答において免疫細胞のエネルギー代謝様式の転換(リプログラミング)が起こることが報告され、炎症の制御メカニズムとして細胞内代謝調節の重要性に注目が集まっている。自然免疫細胞の活性化に伴う代謝変容の分子メカニズムを明らかにするため、細胞外フラックス解析の手法を用いて検証を行った。 マウスマクロファージ様細胞株RAW264.7をLPS/IFN-γの投与により活性化し、細胞外フラックスアナライザーを用いてミトコンドリア呼吸の指標である酸素消費速度、および解糖活性の指標である細胞外酸性化速度の経時変化を測定した。無刺激の対照細胞と比較して、LPS/IFN-γ投与により解糖活性の速やかな上昇が認められた。一方LPS/IFN-γ投与後数時間以内にミトコンドリア呼吸の抑制(酸素消費量の低下)が誘導された。活性化後も細胞内ATPレベルの大きな変動は認められなかったが、ほぼ解糖系に依存したエネルギー代謝にシフトしていることが明らかとなった。また代謝転換の誘導には短時間(30分)のLPS/IFN-γ処理で十分であり、LPS/IFN-γ除去後も24時間に渡って代謝リプログラミング状態が維持された。LPS/IFN-γ刺激による酸化的リン酸化の抑制は新規タンパク質の合成を介した応答であり、低酸素誘導性因子1(HIF-1)の活性化を伴うことも明らかとなった。以上より炎症発生時に自然免疫細胞において観察される解糖系と酸化的リン酸化の切替えを検証するための細胞モデルの構築に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炎症によるマクロファージの活性化において、その機能分化に細胞内代謝経路の調節が深く関わることが明らかとなっている。代謝産物による細胞内シグナルの調節機構やエネルギー産生機構の切り替え(代謝リプログラミング)を解析するためのツールとして、細胞外フラックス解析の手法を応用したin vitro実験系を確立した。培養細胞を用いて細胞内代謝活性を非侵襲的に測定できる本手法の利点を活かし、代謝様式の変容を指標として炎症応答におけるマクロファージの活性化や分化状態を検証することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
エネルギー代謝モードの変換を指標として、炎症に伴う代謝リプログラミングの分子メカニズムを明らかにする。代謝調節を担う細胞内シグナル経路について、遺伝子発現変化や代謝産物の細胞内レベルの変動等の観点から解析を行う。主要なエネルギー代謝経路である解糖系およびミトコンドリア呼吸に関わる因子を中心に、発現抑制系や機能阻害物質を用いた検討により、代謝リプログラミングおよび炎症応答の活性化・収束に関わる制御機構を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遂行にあたり必要に応じて無駄のない研究費の執行に務めたため、当初の見込み額と執行額に若干の差額が生じたが、研究計画に大きな変更はなく当初の 予定通りに研究を遂行し、適切な研究費の使用に務める。
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