神経障害性疼痛の第一選択薬として世界的に使用されているガバペンチノイド(ガバペンチンとプレガバリン)は、その鎮痛機序が広く研究されているものの、臨床ではガバペンチノイドによる鎮痛効果が得られない神経障害性疼痛患者が多いにも拘らず、その理由はほとんど研究されていない。本研究は精神的ストレスがガバペンチノイドの鎮痛効果を減弱させる機序について、青斑核アストロサイトのグルタミン酸輸送体に焦点を当てて検討すると共に、減弱した鎮痛効果を回復させる治療戦略の提案を目的としている。今年度は、ストレスを与えた動物において、青斑核の基礎神経活動が増加し、痛み刺激及びガバペンチン投与に よって惹起される神経活動が低下することを明らかにした。また、ガバペンチンの鎮痛効果は、ストレスを与えた動物でおよそ60%低下した。さらに、ストレスを与えた動物の青斑核のグルタミン酸輸送体(GLT-1)発現量が低下することを確認した。これらの結果は、ストレスが青斑核アストロサイトのGLT-1発現を減少させ、グルタミン酸調節機能に異常が起きたため、青斑核の搬送性低下が起きるという本研究の作業仮説と一致している。
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