研究課題/領域番号 |
19K09347
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
布施谷 仁志 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 助教 (00588197)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | QX-572 |
研究実績の概要 |
本研究は、健常ボランティア、マウス、抗がん剤や放射線治療中の患者を対象に、海外で臨床使用可能な4 級アミン局所麻酔薬を局所・全身投与し、分離遮断効果とそのメカニズムを明らかにすることを目的とする。2019年度は、健常ボランティアに対するQX-572皮下投与の触覚および痛覚に及ぼす効果を検討した。QX-572皮下投与単独では、触覚および痛覚閾値を変化させなかった。しかし、QX-572皮下投与に43度の熱刺激やカプサイシン皮下投与を併用すると、触覚閾値は変化させず、痛覚閾値のみ上昇させた。すなわち、QX-572が、触覚を低下させず、痛みだけを減弱させる(分離遮断する)ことができることが確かめられた。 これまで、TRPV1が末梢痛覚神経にのみ発現していること、そしてQX-314が活性化したTRPV1を介して局所麻酔作用を発現することに注目し、TRPV1をそのアゴニストであるカプサイシンなどで活性化させてQX-314の局所麻酔作用を得る研究が集積されてきた。しかし、この方法には①QX-314の臨床使用が認められていない上、キシロカインよりも安全域が狭いこと、②TRPV1を介するQX-314の効果は、本当に分離遮断になるのか十分検証されていないという課題があった。われわれは、QX-314と同じ4級アミン局所麻酔薬で海外で臨床使用可能なQX-572に注目し、QX-314と同様に活性化したTRPV1を介して局所麻酔作用を発揮するのではないかと着想し、本研究に至った。 本年度の結果から、①QX-314以外の4級アミン局所麻酔薬も、TRPV1を介して局所麻酔薬作用を発揮すること、②臨床使用が認められており、QX-314よりも安全性が高いとされるQX-572により分離遮断できるといえそうだ。今後臨床で分離遮断が可能となる道が大きく広がった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1.当初、各群n=10を目標にボランティアを募ったが、そこまで至っていない。 2.熱、カプサイシン刺激だけでなく、TRPA1やTRPM8など他の受容体に作用するアゴニストを用いて同様に実験し、TRPV1以外の受容体を介して作用しないことまで確認するとなると、さらにボランティアを募る必要があった。 3.加えて、全世界的なコロナウイルス感染の影響で、臨床研修が進めにくい環境にあった。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究は2020年度、2021年度に継続しつつ、2020年度実施予定の動物実験を並行して行い、進めることにする。
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