脳梗塞に対するグルタミン酸拮抗薬の有効性は数多くの動物実験(脳梗塞モデル)で報告されている。しかし、臨床研究では精神作用(興奮、緊張、幻覚)のため、全て開発が中断され、臨床で使用できる薬剤が存在しない。一方、心停止中に用いる場合、患者は意識消失しており、投薬期間中の精神作用(興奮、緊張、幻覚)は問題とならない。本研究はグルタミン酸拮抗薬の効果を1.脳内グルタミン酸濃度、2.ミトコンドリアのエネルギー代謝と脳血流、3.神経学的予後4.自己心拍再開率を指標に検討することを目的としている。初年度は実験系を作成するため、1.ラット用胸骨圧迫装置の開発、2.胸骨圧迫中に脳内マイクロダイアライシスを施行し安定してサンプリングを行うためのステレオ装置の開発、3.マイクロダイアライシス中の微量(4μl)サンプルからグルタミン酸を連続定量する分析装置の開発、を行った。 雄性SDラット(n=14)を用いた。気管挿管し人工呼吸下にステレオ装置に固定、マイクロダイアライシスプローブを右頭頂葉に刺入し、リンゲル液を2μl/分で灌流した。灌流液はフラクションコレクターを用い2分毎にマイクロキャップに収集し、ハイパフォーマンス高速液体クロマトグラフィーでグルタミン酸濃度を測定した。食道から100Hz,50mA の電流を流し心停止を負荷した。7匹のラットでは胸骨圧迫を行わず、グルタミン酸濃度の変化を観察した。残り7匹のラットでは胸骨圧迫装置を用い15mmの深さで300回/分の胸骨圧迫を20分間行った。 その結果、胸骨圧迫しなかったラットではグルタミン酸濃度が272±119μmol/Lに上昇したが、距骨圧迫したラットでは183±53μg/L(p=0.02)に抑制された。ラット用胸骨圧迫装置、胸骨圧迫中に施行する脳内マイクロダイアライシス法、グルタミン酸分析装置、からなる実験系が完成していることが確認された
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