研究課題/領域番号 |
19K09353
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
堤 保夫 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (90523499)
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研究分担者 |
森尾 篤 広島大学, 病院(医), 医科診療医 (60868389)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 吸入麻酔薬 / 細胞膜マイクロドメイン / カベオラ・カベオリン / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
吸入麻酔薬であるイソフルランには心筋保護効果があることが知られているが、そのメカニズムの全容は明らかではない。申請者はこれまで、この心筋保護作用が細胞膜マイクロドメインを起点に発現していることを明らかにしてきた。また近年、ミトコンドリアの機能調節も心筋保護作用に関連していることが明らかになっている。しかし、細胞膜マイクロドメインを介した吸入麻酔薬の心筋保護作用に対してミトコンドリアの機能調節がどのように作用するかは明らかにはなっていない。そこで、本研究は、吸入麻酔薬の心筋保護作用(APC作用)に対し、細胞膜マイクロドメインとミトコンドリアダイナミクスが与える影響を明らかにすることで、APC経路の解明に寄与することを目的とする。 2020年度は、実験2. マウスin vitro遊離心筋細胞を用い、低酸素モデルにて心筋細胞死亡率がAPCにより低下することを明らかにした。各群について吸入麻酔薬の作用がミトコンドリアダイナミクスを含むミトコンドリア機能に与える影響について調べた。まず、マウスの摘出心をランゲンドルフ酵素法にて灌流、得られた遊離心室筋細胞に対して通常培養液を「グルコースなし」のものに置き換え、1時間低酸素状況 (95%N2, 5%CO2) に暴露することで心室筋細胞に虚血状態をつくりだす。その後1時間通常の培養状態に戻すことで再灌流状態とする。吸入麻酔群では、イソフルラン1.0MACにて30分間刺激を与え、吸入麻酔薬による心筋保護作用を明らかにした。その結果吸入麻酔薬は心筋保護作用があり、それらの作用にミトコンドリアが重要な役割を演じていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に示したとおり、今年度は実験2を行った。その進捗状況は、当初の予定通り進んでおり、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、吸入麻酔薬の作用によるミトコンドリアの酸素消費速度 (Oxygen consumption)は細胞外フラックスアナライザー(Agilent Technologies社)を用い、ミトコンドリア膜電位をJC-1 assayにて蛍光検出し、ミトコンドリア染色色素(MitoTracker)、光褪色後蛍光回復法(FRAP assay)を用いて各群のミトコンドリアダイナミクス(ミトコンドリアの分裂と融合)を明らかにする。分裂・融合タンパクについてイムノブロット・real-time PCRを用いて調べることで、ミトコンドリアの融合タンパクであるOpa-1が有意に増加することを明らかにする。 また、ミトコンドリア融合に関与するOpa-1の影響を明らかにするため、Opa-1をノックダウンした細胞を用いて上記実験を行う。
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