研究課題/領域番号 |
19K09354
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
白神 豪太郎 香川大学, 医学部, 教授 (20235740)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 麻酔薬 / 鎮痛薬 / 筋弛緩薬 / 血糖値 / 自動制御 / 筋弛緩度指標 / 痛み度指標 / 鎮静度指標 |
研究実績の概要 |
1)鎮静・鎮痛・筋弛緩薬の薬剤投与自動制御システムの検討 従来、非脱分極性筋弛緩薬の効果判定には単収縮刺激、四連刺激(TOF)比、post-tetanic contraction(PTC)やpost-tetanic fadeなどが用いられてきた。しかし、従来の非脱分極性筋弛緩薬のシナプス後アセチルコリン(Ach)受容体への結合のみを考慮するモデルではTOF比減衰、深い筋弛緩状態(TOF=0)でのPTC反応における非脱分極性筋弛緩薬用量とその反応の関係を説明できない。筋弛緩薬投与自動制御のためには、特に腹腔鏡手術など深い筋弛緩状態(TOF=0)が要求される手術において、筋弛緩薬の用量と筋弛緩度指標との関連(用量反応曲線)を明らかにすることが重要である。非脱分極性筋弛緩薬のシナプス後Ach受容体への結合による筋収縮の低下と非脱分極性筋弛緩薬のシナプス前Ach受容体への結合によるAch放出の低下を考慮することで、TOF比減衰を定性的に説明できるモデル構築について予備的検討を行った。
2)周術期血糖値制御システムの検討。 外科的侵襲による「外科的糖尿病」はよく見られる。特に、大手術では、インスリン感受性が急激に変化するため、血糖値制御が困難である。ICUに入室した大手術後患者(n=17)の血糖値、インスリン投与量、静脈内グルコース投与量データからインスリン感受性を30分毎に計算し、血糖値制御を行うモデルを構築した。このモデルを用いてのシミュレーションでは、当該患者の血糖値71%を80-110 mg/dLに制御でき、<80 mg/dL になったのは1.5%であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)鎮静・鎮痛・筋弛緩薬の薬剤投与自動制御システムの検討 データ取得トラブル(機器不良)ならびに研究主導者の手術室出番回数の減少(副病院長/医療安全管理部長就任)の影響のため、データ蓄積がやや遅れているが、筋弛緩度指標としてTOFcuff筋弛緩度の測定を行い、非脱分極性筋弛緩薬(ロクロニウム)に対する筋弛緩度反応のデータを引き続き蓄積している。また、鎮静度指標(BIS値、脳波エントロピー値など)および痛み度指標となりえる可能性のあるもの(entropy difference、heart rate variabilityなど)についてのデータ蓄積も行っている。
2)周術期血糖値制御システムの検討 ICU入室大手術後患者の血糖値、インスリン投与、グルコース投与などのデータを蓄積している。
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今後の研究の推進方策 |
1)鎮静・鎮痛・筋弛緩薬の薬剤投与自動制御システムの検討 鎮静度指標と全身麻酔薬(鎮静薬)投与、痛み度指標と痛み処置(レミフェンタニル/フェンタニルなどの鎮痛薬投与,神経ブロックなど)、筋弛緩度指標と筋弛緩薬投与のデータを蓄積する。筋弛緩度制御モデルの改良について検討する。新たな筋弛緩度モニター(フィリップス社製)を用いた筋弛緩度指標測定についても検討を進める。
2)周術期血糖値制御システムの検討 基礎的データの蓄積を引き続き行う。血糖値制御モデルの改良について検討する。消化管からのグルコース摂取のモデルについても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定であったSEDLINEモニター(Masimo社)からのオンラインデータ取得が困難(終了後のオフラインデータ取得は可能)ということが判明したため、しばらく購入を見合わせたことにより物品費の使用が少なくなった。新たな筋弛緩度モニター(フィリップス社製モジュール)を購入したが、これも単体ではオンラインデータ取得が困難であることが判明した。これらの機器がオンラインデータ取得可能となるようにメーカーと相談する(費用が発生する見込み)。また、データ取得用PCを更新するので、それに伴う費用が発生する見込みである。
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