研究課題/領域番号 |
19K09354
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
白神 豪太郎 香川大学, 医学部, 教授 (20235740)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 麻酔薬 / 鎮痛薬 / 筋弛緩薬 / 血糖値 / 自動制御 / 筋弛緩度指標 / 痛み度指標 / 鎮静度指標 |
研究実績の概要 |
1)鎮静・鎮痛・筋弛緩薬の薬剤投与自動制御システムの検討 筋弛緩薬投与自動制御システム構築のため,筋弛緩薬用量と筋弛緩度との関係を説明するモデル構築を行うこととした。非脱分極性筋弛緩薬ロクロニウムのシナプス後アセチルコリン(Ach)受容体への結合による筋収縮の低下とロクロニウムのシナプス前Ach受容体への結合によるAch放出低下を考慮することで四連刺激(TOF)減衰を定性的に説明でき,浅い筋弛緩状態(TOF>0)から深い筋弛緩状態(post-tetanic contraction>0)を一貫して評価できるモデルを構築し,報告した(Ann Int Conf IEEE Eng Med Biol Sci 2020:5202)。このモデルはTOFcuff筋弛緩度モニターで得られた結果によるものである。筋電図を用いて筋弛緩度を測定する新規筋弛緩モニター(日本光電社製)を購入し,TOFcuffとの比較を行ったところ,preliminaryではあるが,測定値に差があると思われた。新たな筋弛緩モニターでのデータによるモデルを再検討し,さらにモデルを改善するため,当該年度では,筋弛緩度データの蓄積を行った。 新しい静脈麻酔薬レミマゾラム(商品名アネレム)の薬剤投与自動制御システムを構築するため,当該年度では,レミマゾラムを用いて鎮静度(BIS,ENTなど)データの蓄積を行った。
2)周術期血糖値制御システムの検討 外科的侵襲によるインスリン感受性の急激な変化(「外科的糖尿病」)のため,周術期血糖値制御がしばしば極めて困難になる。ICUに入室した大手術後患者の血糖値,インスリンおよび静脈内グルコース投与量のデータからインスリン感受性を算出し,血糖値制御を行うモデルを構築し,報告した(Adv Biomed Eng 2020;9:43)。当該年度は,血糖値制御モデル改善のため,データをさらに蓄積した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)鎮静・鎮痛・筋弛緩薬の薬剤投与自動制御システムの検討 COVID-19パンデミックでの手術件数減(特に待機的定型的手術),データ取得トラブル(機器不良),研究主導者の病院管理業務(2021年9月まで副病院長,医療安全管理部長,高難度新規医療術等評価委員会委員長,臨床倫理委員会委員長,特定行為研修センター長などを兼任,2021年4月から手術部長兼任)などの影響があり,データ取得が遅れていた。筋弛緩度指標としてTOFcuff筋弛緩度に加えて新たに筋電図による筋弛緩度測定を始めた。新規静脈麻酔薬レミマゾラム(商品名アネレム)の鎮静度指標等への影響についてのデータ蓄積を行ってきたが,COVID-19パンデミックおよびウクライナ戦争のためレミマゾラムの入手が困難になっている。
2)周術期血糖値制御システムの検討 ICU入室大手術後患者の血糖値,インスリンやグルコース投与量などのデータを蓄積している。
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今後の研究の推進方策 |
1)鎮静・鎮痛・筋弛緩薬の薬剤投与自動制御システムの検討 鎮静度指標と全身麻酔薬/鎮静薬投与,痛み度指標と痛み処置(オピオイド鎮痛薬投与,末梢神経ブロックなど),筋弛緩度指標と筋弛緩薬投与のデータを蓄積する。レミマゾラム投与による鎮静度指標への影響についてのデータを蓄積し,レミマゾラムの自動制御モデルを構築する。筋弛緩度制御モデルの改良を行う。新たな筋弛緩度モニター(筋電図によるもの)を用いた筋弛緩度指標測定についてのデータを蓄積し,モデル構築を行う。
2)周術期血糖値制御システムの検討 基礎的データの蓄積を引き続き行う。血糖値制御モデルの改良について検討する。消化管からのグルコース摂取のモデルについても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ取得が遅れているため,データ取得に必要な消耗品の使用が少なかった。当初購入予定であったSEDLINEモニター(Masimo社)からのオンラインデータ取得が困難であるため購入を断念した。筋電図を用いた新たな筋弛緩モニター(日本光電社製)を購入したが(オンラインデータはとりあえずは取得可能),麻酔モニターおよび部門システム (フィリップス社製ORSIS)への接続ができず,今後,接続するための費用が必要である。データ取得用のPCが老朽化しているので購入を検討する。
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