研究課題/領域番号 |
19K09356
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
枝長 充隆 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (70616169)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 抗血小板薬 / DOAC / 血小板機能 / 凝固特性 / 一般採血 / 血液凝固・血小板機能測定装置 / TEG6s |
研究実績の概要 |
現在、本邦は急速に超高齢化社会に向かって邁進しております。われわれ麻酔科医は、自然と循環器合併症を持つ高齢者への対応が益々増える事が予想されています。麻酔に不可欠な鎮痛を考慮する際、麻酔科医は局所麻酔の適応についてリスク評価を元にさらに慎重に考慮する必要があります。2016年に抗血栓療法中の区域麻酔・神経ブロックガイドラインが出版されたものの、麻酔科医が抗血小板薬の継続および中止に関する介入はほぼないのが現状です。一部の抗凝固薬に関しては、一般採血の結果が薬物動態の指標となりえますが、抗血小板薬および近年処方が増えているDOAC(direct oral anticoagulant)に関しては、効果を判断する指標がなく、未だにモニタリングが確立されていない中で臨床的判断が必要とされます。薬物動態は個々人で異なり、循環器疾患を合併した高齢者に対しては注意が必要です。そこで、抗血小板薬およびDOAC内服継続および中止された65歳以上の高齢者の質的凝固機能および血小板機能を測定し、血液凝固機能および血小板機能測定のスタンダード化を目指す目的で研究を計画しました。 使用する装置はTEG6sであり、抗血小板薬内服していた患者には、プレートレットマッピング法の血液シートを使用して、血小板機能の変化を観察した。一方、DOACに関しては、グローバルヘモスターシス法の血液注入シートを使用して、凝固特性の変化を観察した。 現時点で、研究実施できた抗血小板薬内服患者は8名、DOAC内服患者は4名であります。 この結果は、6月18日から20日に開催予定の日本血栓止血学会のポスター演題として採択されたため、発表予定です。 本発表を通じて、さらに症例数を重ねて来年度には海外学会へ演題を投稿する予定です。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、研究結果を日本血栓止血学会に出すつもりでおりました。症例数としては12例で、予定の100症例にはまだ及びませんが、本年度に現時点までの結果を上記の学会(2020年6月18日~20日、大阪)へ投稿しまして、ポスター演題として採択されました。まず、第一歩として順調であると思われます。今年は、さらに症例数を増やして、来年度に海外の学会に演題投稿する予定でおります。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらに症例数を増やして抗血小板薬(バイアスピリン、プラビックス、エフィエント、オパルモン、シロスタゾールなど)およびDOAC内服患者のデータを増やして、海外学会への演題発表、そして研究結果を海外雑誌に投稿予定です。 さらに本研究報告が一つの起点となって、一般採血ではなく、viscoelastic point-of-care monitoringのルーティン化、抗血小板薬およびDOACの投与量のオーダーメイド化、薬剤の止める時期や再開する時期の明確化などに進むようになって欲しいと考えておりますし、それの一つの手助けになれば良いと考えております。
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次年度使用額が生じた理由 |
第一に、本研究を進めていく中で、第42回日本血栓止血学会学術集会に演題を投稿致しました。結果、演題採決となりましたので、学会発表および旅費としての経費が必要となります。また、来年度にはデータ数をさらに多くし、海外学会への演題投稿を考慮しております。そのための経費が必要となります。 使用計画としては、昨年度と同様に本研究を継続する。具体的には、65歳以上の手術を受ける患者さんを対象として、抗血小板薬内服の継続および中止に関わらず、TEG6sを用いてプレートレットマッピング法を用いて血小板機能を測定する。一方、DOACを内服および中止した方には、TEG6sを用いてグローバルヘモスターシス法を用いて凝固特性を測定する。測定は2回で、麻酔前および手術終了時で行う。対象症例数は100症例であり、本年度も継続して研究遂行する。
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