研究課題/領域番号 |
19K09358
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
草間 宣好 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (60336691)
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研究分担者 |
徐 民恵 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (60381886)
大澤 匡弘 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 准教授 (80369173)
祖父江 和哉 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (90264738)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 慢性疼痛 / Electome / 脳波 |
研究実績の概要 |
本研究は、慢性疼痛モデルラットに高密度多点電極を埋め込み、自由行動下の動物から多数の脳領域の神経活動の同時記録を行う技術を用いて、慢性疼痛に特異的な脳活動パターンを見出し、慢性疼痛の特異的脳はモデルを作成することが目的である。 今年度は、これまでに得られている大規模脳活動記録の結果の数理的解析を中心に行った。神経障害性疼痛モデルであるspared nerve injury(SNI)手術を行ったラットから得られた局所電場電位(LFP)をもとに、一次体性感覚野、補足運動野、前帯状回皮質、後帯状回皮質、前頭前皮質、島皮質、側坐核、淡蒼球、視床外側核の領域間や各領域内での神経発火の同期生や周期性、干渉のしやすさ、情報の流れを解析した。その結果、一次体性感覚野と前帯状回皮質、補足運動野の間の領域活動性に関連があることが示された。また、側坐核領域での領域内神経動機活動性についても変化が見られることが明らかになった。 一方、動物の覚醒状況で脳活動が大幅に変化することが疑われたため、動物の行動と脳活動のデータを詳細に解析し、覚醒状態、REM状態、およびnon-REM状態として、それぞれにおける脳活動の変化を解析した。その結果、覚醒状態において、淡蒼球と側坐核の活動性に同期性が認められ、その他の領域においても、同期性や非同期性の亢進などが神経障害性疼痛モデルで認められた。 これらのことから、神経障害による脳活動の変化に対して、動物の覚醒状態に応じた解析を行う必要性があることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、申請書で計画した内容に沿って問題なく進行しており、実験計画は順調に進展している。今年度の目標であったElectomeの作成について、すでに着手を始めることができた。ただ、解析については、現在進行している最中であり、データの精査などの必要が出てくる可能性も否めないため、次年度の早い段階で、Electomeの作成の目処を立てる必要があると考えている。 臨床研究については、実施する根拠となる基礎研究の結果を待ちつつ、患者のリクルートの方法などの具体的なプロトコルについて打ち合わせを開始している。臨床研究を行うための倫理審査の書類の準備にも入っている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの研究成果より、記録を行った各脳領域の活動性については、神経障害性疼痛モデルにおいて活動同期性や活動非同期性の変化が見られたことから、疼痛が慢性化する際に見られる脳活動のベクトル変化がある可能性が示された。このことから、Electome解析により、各脳領域の興奮性の変化のベクトルが、どの方向に向かうと疼痛が慢性化するのかという解析を行い、慢性疼痛に特有の脳活動パターンを同定する。 また、臨床研究においては、基礎研究で得られた慢性疼痛特有の脳活動パターンを当てはめることで、慢性疼痛患者の痛みの定量的かつ客観的な評価が可能な指標に脳活動パターン解析が利用できるかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、旅費等の使用がなく、動物実験も一時的に減らした時期もあったため、次年度使用額が生じている。 次年度は、疼痛に特異的な脳活動の変化を動物の覚醒状態に応じて解析し、引き続きElectomeの作成を行う予定であるため、実験動物や動物用の脳波測定電極の部品、疼痛モデル動物作成用器具、プラスチック用品の購入費用などに予算が必要である。 また、臨床研究では、研究参加患者への謝金や脳波測定料が必要となる。
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