研究実績の概要 |
【ヒドロキシエチルスターチ(HES)製剤がヒアルロン酸溶液へのアルブミン分配係数におよぼす影響】 <方法>分子量130,000のHES製剤が、ヒアルロン酸溶液へのアルブミン分配係数におよぼす影響を測定した。リン酸緩衝液(PBS)に溶解した0.1%, 0.3%, 0.5% ヒアルロン酸溶液を透析セル内に留置し、サンプル側にPBSまたは2% HES溶液に溶解したFITCによりラベルしたアルブミン溶液を注入することにより、アルブミンをヒアルロン酸溶液へ分配させた。分光光度計を用いて波長494 nmでのサンプル溶液およびヒアルロン酸溶液中のアルブミンの濃度を測定し、その比を計算することにより、ヒアルロン酸溶液へのアルブミン分配係数を求めた。測定は、37°Cにて行った。 <結果>1. サンプル液がPBSの時の0.1%, 0.3%, 0.5% ヒアルロン酸溶液へのアルブミン分配係数は、それぞれ、0.97±0.09、0.79±0.05、0.74±0.04 (mean±SD、n=4)であった。 2. サンプル液が2%HES溶液であった時の0.1%, 0.3%, 0.5% ヒアルロン酸溶液へのアルブミン分配係数は、それぞれ、1.05±0.04、0.90±0.06、0.78±0.03 (mean±SD、n=4)であった。 <考察> 1. ヒアルロン酸溶液へのアルブミン分配係数は、ヒアルロン酸の濃度が上昇するにしたがって低下した。この結果は、ヒアルロン酸のゲル状構造が、アルブミンの分配を抑制することを示す。 2. HESは、ヒアルロン酸溶液へのアルブミン分配係数を増加させた。これは、HESがヒアルロン酸のゲル状構造を弱めることを示唆している。この所見は、生体においてヒドロキシエチルスターチが血管内皮細胞表面のゲル構造に及ぼす影響を考える上で重要な手がかりとなる。
|