研究課題/領域番号 |
19K09370
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
飯田 宏樹 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30159561)
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研究分担者 |
小澤 修 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90225417)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 骨粗鬆性腰痛 / 破骨細胞 / 骨芽細胞 / リモデリング / RANKL / osteoprotegerin / 骨代謝調節因子 / 細胞内情報伝達 |
研究実績の概要 |
骨粗鬆症に伴う疼痛の発症機序として骨粗鬆症自体による疼痛が存在することがわかってきており、骨粗鬆症による骨粗鬆性腰痛の概念が提唱されている。骨粗鬆症自体による疼痛には、破骨細胞の活性化による酸性環境が疼痛に関与している。 骨芽細胞は osteoprotegerin(OPG)を分泌し、receptor activator of NF-κB ligand(RANKL)-RANKの結合を阻害することで破骨細胞の活性化を抑制している。OPGは,破骨細胞の分化を阻害し骨吸収を抑制する。このバランスが崩れると、疼痛発生の原因となる。 骨代謝が痛みに関与する病態に対して、代表的な鎮痛薬が使用される際に、骨代謝に与える影響の観点から安全で有効な使用法を探求することを目的とし、鎮痛薬による前処置の後、OPG産生を増強する骨代謝調節因子で刺激し、鎮痛薬の骨芽細胞に対する作用を検討する。 骨芽細胞様MC3TC-E1細胞、ヒト骨芽細胞および初代培養系骨芽細胞を用いて、細胞を鎮痛薬で刺激し、OPGの産生・分泌を測定することで鎮痛薬と骨代謝の関係性を検討する。また、分子機序の詳細を明らかにするために、各骨代謝調節因子が誘導するp38 MAP kinaseのリン酸化、SAPK/JNKのリン酸化、p44/p42 MAP kinaseのリン酸化、さらにMEK1/2や Raf-1のリン酸化等細胞内情報伝達分子に与える影響を検討する。骨芽細胞における細胞増殖因子(TGF-β等)・サイトカイン(インターロイキン6等)の合成・分泌や細胞周期調節因子などがどのように変化するかについて、タンパク質レベルで検討し、細胞内情報伝達機構との関連において各種鎮痛薬の作用を解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PGF2αは骨芽細胞のOPG遊離を促進することがわかっているが、この機構においてトラマドールがどのような働きをするか検討した。骨芽細胞様MC3T3-E1細胞をトラマドールで前処置したのちにPGF2αで細胞を刺激し、OPG遊離を測定した。トラマドールは用量依存性にPGF2αによるOPG遊離刺激を増強した。この実験ではトラマドールは細胞内のmRNAの発現も上昇させた。モルヒネでOPGの遊離を検討したところ、モルヒネはOPGの遊離を増強させた。また、ナロキソンはこれらの作用を抑制した。PGF2αは骨芽細胞内でSAPK/JNK, p38 MAP kinase, P44/p42 MAP kinase, Rho-kinaseの活性化を介してOPGの合成を促進することがわかっている。トラマドールとモルヒネはPGF2αによるSAPK/JNK、p38 MAP kinaseの活性化を増強したが、Rho kinase, p44/p42 MAP kinaseの活性化には何ら影響しなかった。以上より、トラマドールはオピオイド受容体を介してSAPK/JNK, p38 MAP kinaseを活性化し、PGF2αによるOPG合成を促進していることが分かった。 また、BMP-4は骨芽細胞においてS6 kinase, SMAD1/5/8の活性化を介してOPG遊離を増強することがわかっている。この機構においてデュロキセチンがどのような働きをするか検討した。デュロキセチンで前処置した後にBMP-4でMC3T3-E1細胞を刺激するとOPG遊離が抑制されることがわかった。また、デュロキセチンはBMP-4によるSMAD1/5/8の活性化を抑制し、S6 kinaseの活性化には影響を与えなかった。以上よりデュロキセチンはBMP-4によるOPG遊離をSMAD1/5/8を介して抑制していることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
PGF2α、PGE2は骨芽細胞においてp38 MAP kinase, SAPK/JNK, p44/p42 MAP kinaseの活性化を介してOPG遊離を増強することがわかっている。アセトアミノフェンの影響を検討する予定である。また、PGE1はp38 MAP kinaseの活性化を介して骨芽細胞のOPG遊離を促進することがわかっている。デュロキセチンがこの機構においてどのような働きをするか検討する予定である。
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