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2020 年度 実施状況報告書

膜受容体の流動性とシグナル伝達の関係性から見た揮発性麻酔薬作用機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K09373
研究機関香川大学

研究代表者

小野 純一郎  香川大学, 医学部, 協力研究員 (90363217)

研究分担者 樺山 一哉  大阪大学, 理学研究科, 准教授 (00399974)
坂内 博子  早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40332340)
鈴木 辰吾  香川大学, 医学部, 准教授 (50451430)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード揮発性麻酔薬 / 膜受容体 / 流動性 / 糖取り込み / GABAA受容体
研究実績の概要

本研究は細胞膜上の受容体の流動性とシグナル伝達の関係性を探ることによって麻酔メカニズムを解明しようとしている。研究計画の骨子は、まず細胞膜上の麻酔関連受容体を蛍光標識し、揮発性麻酔薬に細胞を暴露した後に膜受容体の側方拡散を測定する。次にセカンドメッセンジャーのリン酸化等の測定を行い、膜流動性とシグナル伝達の関連性を探るものである。
2019年度からGABAA受容体γサブユニットの強制発現細胞株の樹立を目指したが(担当;小野、鈴木、樺山)、導入効率や蛍光発現量の不安定性の問題解決が困難で、安定細胞株の樹立は一旦休止とした。2020年度(令和2年度)は、安定細胞株の代替手段として生細胞のネイティブなGABAA受容体を用いて実験を進めた(担当;坂内、小野)。麻酔関連受容体であるGABAA受容体の流動性に揮発性麻酔薬が与える影響に焦点を当てて研究を行った。研究手法としては、膜受容体を蛍光標識して麻酔薬を生細胞に作用させた上でライブセルイメージングによって側方拡散分析を行った。具体的には、マウス大脳皮質の神経細胞を培養して、イソフルランを作用させた時のポストシナプスでのGABAA受容体の側方拡散を「量子ドットによる単一粒子追跡法」を用いて観察した。量子ドットとは、直径約15~25nmの半導体素材からなるナノ結晶であり,生命科学の分野では蛍光プローブとして用いる。
一方、麻酔薬が麻酔作用以外で関与する病態についても並行して研究しており、本課題では麻酔薬が細胞内への糖取込みに与える影響について研究している。2019年度はイソフルランが細胞内への糖取り込みを抑制していることを証明したが、2020年度はそのメカニズムに迫った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

量子ドットでラット海馬培養ニューロンのGABAA受容体を蛍光標識し、1mMイソフルランを作用させたときのGABAA受容体の拡散係数を求めた。イソフルランに暴露した時のGABAA受容体の拡散係数は、非暴露群の拡散係数と比較して小さかった。
細胞内への糖取込み抑制のメカニズムについての研究は、グルコーストランスポーターであるGLUT4の膜へのトランスロケーションを、さらにGLUT4のインスリン受容体からGLUT4へのシグナル伝達で重要なp38経路やAkt経路について調べた。その結果、GLUT4トランスロケーションはイソフルラン暴露で影響は見られなかったが、膜上でのGLUT4活性を支配するp38MAPキナーゼのリン酸化が抑制されていた。更にインスリン受容体とGLUT4を蛍光標識して細胞膜上での側方拡散をFRAP(fluorescence recovery after photobleaching)法により解析した。その結果、両者ともイソフルランによって流動性が上がっていた。

今後の研究の推進方策

ネイティブなGABAA受容体の側方拡散の低下について、そのメカニズムを追求したい。そのために、プレシナプスのシナプス小胞も同時に蛍光標識して、プレ-ポストの正常なシナプス構造が保たれているかどうかを調べる。また、GABAA受容体のみならず他の麻酔関連受容体についても流動性の低下が見られるかどうか検討したいと考えている。
イソフルランが持つインスリン受容体への作用としてもう1つチェックしておきたいのが、インスリン受容体基質(IRS)である。IRSのリン酸化について検討したいと考えている。
受容体の流動性は細胞骨格に大きく影響されるため、麻酔薬作用下における細胞骨格の変化についても蛍光標識を用いて調べてみる計画である。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍により、当初計画していた研究活動が縮小を余儀なくされたため。

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公開日: 2021-12-27  

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