『目的』悪性腫瘍治療は化学療法後に手術療法を施行することが多い。手術療法の術後予後に関与する因子として患者の免疫能維持は重要であるが、化学療法(抗がん剤)影響下にある免疫細胞への全身麻酔薬の影響は未検討である。本研究は悪性腫瘍治療の一連の流れにおいて、抗がん剤影響下にある免疫細胞にあたえる全身麻酔薬の影響を解析することで、術後予後改善を踏まえた悪性腫瘍手術の至適な麻酔薬選択を可能にすることを目的として行われた。『令和2年度までの研究成果』抗がん剤であるトポイソメラーゼII阻害剤のエトポシドを用い、マウス胸腺細胞及び脾臓細胞の死細胞誘導至適濃度の決定と至適培養時間、その条件を決定した。このエトポシド培養濃度(10-6Mまたは10-5M)および培養条件を用いて、胸腺細胞または脾細胞をエトポシドで刺激後にそれぞれエトポシドを除去してからプロポフォール・0μM、25μM、50μMを添加、培養したところ、プロポフォールはエトポシドのアポトーシス誘導効果を弱いがさらに増強した。『令和3年度研究成果』同様の培養系において胸腺細胞及び脾臓細胞のミトコンドリア膜電位を観察した。胸腺細胞はエトポシド10-6M下でプロポフォールの容量依存性にミトコンドリア膜電位は低下した。脾臓細胞のミトコンドリア膜電位はエトポシド10-6M下でプロポフォールを作用させても低下した脾臓細胞は増加しなかった。エトポシド10-5M下ではプロポフォールにより膜電位が低下した脾臓細胞は増加した。同様に胸腺細胞及び脾臓細胞にエトポシドを作用させた後、セボフルランを曝露したところ、胸腺細胞ではセボフルラン8時間曝露でセボフルラン用量依存性に死細胞が増加し、ミトコンドリア膜電位低下細胞は増加した。脾臓細胞ではセボフルラン及びエトポシドの容量依存性に死細胞、ミトコンドリア膜電位低下細胞は増加した。
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