研究課題/領域番号 |
19K09379
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
柴崎 雅志 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20405319)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 神経障害性疼痛 / コンパートメントモデル / マイクログリア / 神経細胞培養 |
研究実績の概要 |
神経障害性疼痛の原因は多岐にわたるが、それは生体内での多種類の細胞や物質が複雑に相互作用を起こしているため一元的にそのメカニズムを解明することは困難である。その解析を進めていくためにはin vitro, in vivoの両方からのアプローチが必須である。本研究ではin vitroの研究の一環として、マウスの後根神経節を回収し、既成品のチャンバーを用いて区域培養を行い、軸索からの物質を独立して獲得することによって生化学的な変化を確認することを目的としている。そのためには区域培養を行い適切に行い、十分な量の軸索由来物質を獲得する必要がある。 本研究では実験の出発点として区域培養が必要となるが、従来型の区域培養を施行した際には大人マウスで回収できる軸索がごく少量であり、実験を進めるに当たって十分な量のタンパク質を得ることができていない。区域培養をするに当たっては従来のテフロンを用いた大量生産品を用いているが、3Dプリンターを用いて、より高効率に軸索由来物質を集めることを一つの目的としている。そのため3Dプリンターで作成したPLAチャンバーの安全性を確認することを一つの目的としている。感覚的には3Dプリンターを用いたチャンバーでも良好な神経の発育が認められているように思われるが、PLAはオートクレーブできないため滅菌法の工夫が必要であり、最適な条件の模索と、安全性の確認を行っている。 また、その一方で培養条件の調整を行い、以前に比べて飛躍的に良好な細胞や軸索の成長を認めている。ただ、その状況であってもSDS-PAGEにより生成するバンドはおそらく培地由来のものと思われるものばかりであった。まずは条件を工夫することで回収できるタンパク質量を増やして実験継続するように試みてみるが、これが困難な場合、マイクログリアを含めた単球系細胞が受容体を持っている候補物質に絞ることを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究において、区域培養を行い十分なタンパク質量を確保することが必須であるが、従来の方法では十分の蛋白量が得られていないため、チャンバーの工夫を行う必要がある。低コストでより細かい調整を可能とするため、PLAを用いて3Dプリンターを用いたチャンバーを作成し、従来型と比較した細胞への安全性を証明した後、より高効率のチャンバーを作成したいと考えているが、PLAはオートクレーブが難しい素材であるため、UV滅菌を行うことでの実験の継続を行おうと考えている。ただし、PLAはUV照射により乳酸、ギ酸、酢酸などの物質が生成されることが過去の研究によりわかっている。30分程度のUV照射によって生じる物質の量はごく少量と考えられ、毒性の強い物質でもないが、UV照射後、実験に用いる前にチャンバー浄するべきか洗浄せずにそのまま用いるべきかの検証を行っている。それらを確認しながら引き続きチャンバーの安全性の確認を進めていく予定である。 また、それと並行して予定通りのSDS-PAGEも進めているが、効率を高めても、培地細胞由来と思われるバンドしか認められていない。これについても条件を変更して適切な結果が得られるように調整する予定であるが、場合によっては候補物質を絞ることも考慮する必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在は3Dプリンターによって作成したチャンバーの安全性を確認し、高効率にタンパク質を収集できるチャンバーの作成を進めること、より多くのタンパク質が培地内に集まるように培養条件やサンプルを採取するタイミングを調整することを主軸に実験を継続している。適宜SDS-PAGEも施行しているが、現状では十分なタンパク質量が得られているとは言えない。 これらが困難な場合、マイクログリアを含めた単球系細胞が受容体を持っている候補物質に絞っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた実験方法をシンプルに行うだけでは、当初想定していたような結果が認められていない。 十分なタンパク質量が得られていないため、SDS-PAGEによるバンドの出現が不十分になっていることが原因と考えられる。 より多くのタンパク質を確保するために最適な条件を模索するとともに、実験に用いているチャンバーの種類の改良も行っていく必要があり、場合によっては候補を絞ることも考えなくてはいけない。 実験を継続するに当たって。培養皿や、培養液およびサプリメントなど、神経成長に関わる物質、単利用のアルブミンなどを継続的に購入する必要がある。また、細胞の成長を評価するために免疫染色を行う必要があるため、抗体や処理液などを購入する必要がある。さらに、SDS-PAGEを継続するために、ランニングバッファーや対照用のタンパク質などを購入する必要がある。上記を含め一般的な研究に必要な消耗品も補充していく必要がある。
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