神経障害性疼痛の原因は多岐にわたり、生体内で多様な細胞、広範な領域、長期にわたる時系列および複数の因子が複雑に絡み合っている。そのため、これらのメカニズム全体を包括的に理解することは非常に困難であり、この課題に取り組む中で、我々は過去の研究からマイクログリアが神経障害性疼痛に関与していることを考慮し、単球系細胞に焦点を当てた研究を行ってきた。 また、疾患のメカニズムを単純化するため、in vitro神経障害疼痛モデルを確立する試みを行った。これにおいて、従来のテフロン製Champenot-Chamberを使用したモデルでは軸索伸長が不十分であることが示唆された。この問題に対処するため、ポリ乳酸(PLA)を素材とするChampenot-Chamberを開発し、その結果、神経細胞の発育がテフロン製よりも優れていることが明らかになった。また、神経障害時に増加するタンパク質の包括的調査のため、SNI-modelを作成し、傷害、非傷害群においてSDS-PAGEを行ったが、特異的なバンドは認められなかった。これらから、in vitro神経障害性疼痛モデルの確立には至らなかった。 神経障害性疼痛モデルの作成後、脊髄後角にCD11b陽性細胞が集積することが観察されるため、resident microglia以外のCD11b陽性細胞の可能性に焦点を当てることにした。脾臓細胞からCD11b陽性細胞を磁気選別を行い、96.54(±2.41)%の純度でCD11b陽性細胞の選別が可能となった。次に、脾臓由来CD11b陽性細胞が脊髄後角に移動する誘引となる原因タンパク質を調査するため、文献的調査よりfractalkineに注目し、その受容体であるCX3CR1が脾臓由来CD11b陽性細胞に存在するかを調査をしているところで研究が終了した。
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