研究課題/領域番号 |
19K09387
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
大田 典之 近畿大学, 医学部, 教授 (60379162)
|
研究分担者 |
中尾 慎一 近畿大学, 医学部, 教授 (10207714) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 樹状細胞 / IL-12 / 接触過敏症 / Translocator protein |
研究実績の概要 |
申請者らは現在までに、免疫系に対するベンゾジアゼピン系薬物の作用を解析してきた。さらにベンゾジアゼピン系薬物は末梢性ベンゾジアゼピン受容体(現在ではTranslocator proteinと呼ばれる)を介する免疫細胞への作用を検討してきた。骨髄由来の樹状細胞に対するTranslocator proteinシグナルの影響をTSPOリガンドによって広範に検討した。マウスの骨髄からGM-CSFを用いて誘導した樹状細胞に対して、TSPOリガンドであるEtifoxine(以下Efxと略する)を作用させた。樹状細胞はLPSによって分化誘導が行われ、副刺激分子であるCD80 CD86の発現が増加しTh-1を誘導するサイトカインであるIL-12の発現が増加する。この樹状細胞の分化誘導過程にEfxを存在させるとこれらの樹状細胞の形質変化は抑制された。Efxの存在下に誘導した樹状細胞と溶剤のみを添加した対照群の樹状細胞によるリンパ球の分化誘導の変化を解析した。対照群の樹状細胞によってリンパ球の増殖刺激がなされ、Th-1サイトカインであるIL-12の産生増加が起こった一方で、Efxの存在下で分化させた樹状細胞はリンパ球の増殖刺激能が低くIL-12の産生は減少した。これはすなわちEfxの存在下で分化させた樹状細胞はリンパ球のTh1への分化の刺激能が抑制していることが示された。次にEfxの存在下で分化させた樹状細胞が動物個体レベルでの免疫応答にどのように影響しているのかを樹状細胞の移入によって発症する接触過敏症モデルによって評価した。ハプテンを取り込ませた樹状細胞をマウスに投与し数日後に同じ抗原性を持つハプテン分子で誘発すると耳介の腫脹を認めるのに対し、Efxで処理した樹状細胞で免疫すると耳介の腫脹は軽減した。これは樹状細胞によって生じるTh1型の免疫応答がEfxによって抑制されたことを示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハロペリドールの樹状細胞を介した酸化的ストレスの影響を検討する過程で、主要な中枢神経系に対する鎮静薬であるベンゾジアゼピン系薬物の作用にも注目し、研究期間の後半ではその作用の解析にも注力してきた。この解析では鎮静薬の影響を超えてTranslocator proteinという広く存在する分子を介した免疫制御に対象を広げ研究を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
TSPOリガンドを用いた免疫系の制御の可能性を検討していく。この検討によって個体レベルの免疫応答をTSPOリガンドの投与によって制御できる可能性を解析できる。ここで対象とする実験系はマウスの接触過敏症モデルとする。マウスをハプてんで感作したしたのち同じハプテンで誘発すると耳介などの局所が腫脹するモデルである。これは主としてTh1型の免疫応答によって発症する免疫疾患モデルである。この接触過敏症モデルに対するTSPOリガンドの影響を多角的に解析する。接触過敏症モデルの感作相あるいは誘発相のいずれにリガンドを投与すれば接触過敏症モデルを抑制できるのかを検討する。また複数のTSPOリガンドを用いて同様の結果が得られることを確認する。さらにはTSPOの遺伝子欠損マウスを用いた接触過敏症モデルの発症への影響を解析してTSPOシグナルの免疫応答の成立への影響を追及する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験の計画上で実施を予定していた研究で、研究に必要な時間が多く必要なため、本年度に遂行できず来年度に持ち越して行う必要がある実験がある。その主たるものは研究の進捗で記した接触過敏症モデルを用いた実験である。この実験を遂行するための予算として来年度に繰り越すこととした。
|