研究課題/領域番号 |
19K09390
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大島 拓 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (50375789)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Metabolomics / 重症患者 / エネルギー代謝 / 同化反応 / 異化反応 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はこれまで明確ではなかった栄養投与を開始すべきタイミングを,代謝産物(metabolome)の解析(metabolomics)により判断できることを示すことである.ICUに緊急入室し長期の人工呼吸管理を要する重症患者でエネルギー消費量ならびに対組成の変化を測定し、その時のmetabolomeが異化反応時のパターンを示すか同化反応時のパターンを示すかによって、内因性あるいは外因性のエネルギー利用の関係や推移を評価することを試みる.更に,高額で時間もかかる代謝産物の測定に代わり,日常的に用いられる生理学的モニタリングや生化学的検査で同様の評価が可能な方法を合わせて検討する. 本研究の研究計画について千葉大学大学院医学研究院倫理審査委員会より承認を得た。研究の実施に備え、 case report formの作成や、検体の収集用やスケジュール管理を確立した。前例のない解析であり、metabolomeについても標的を決めずに網羅的解析からパターンの変化認識を目標とすることとした。千葉大学予防医学センターを研究協力者に加え、主にmetabolome解析の条件設定や測定結果の解析における協力を依頼した。これまで臨床検体での測定経験に乏しかったことから、検体処理法や保存法、測定条件の確認を行うために、健常人検体を用いてシミュレーションを行った。実際に千葉大学の共有機器センターの質量分析計を用いた測定も行い、安定した測定が可能であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の準備を終え、2020年1月より症例登録が開始することを予定していたが、現時点で登録症例はない。理由としては、第1には適切な症例がICUにタイミングよく入院してこないことが挙げられる。最初の症例は出来るだけ条件の整った症例を抽出したいが、人工呼吸管理を要する患者は多く入室するものの、同意取得のタイミングを逃すなどして開始に至っていない。また、新型コロナウイルス感染の拡大に伴い、千葉大学病院ICUでも重症COVID患者を受け入れる方針としている。本研究では着脱時のエアロゾルの発生や呼気ガス測定による汚染が懸念される関節熱量測定が必須であることから、感染が疑われる症例でも組み込みは困難だと判断している。また、施設内の家族面会が原則禁止されたこともあり、さらに同意取得が困難な事態となっている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの流行期でも当施設では通常の重症救急患者の受け入れを完全に止めることはないため、引き続き症例登録を目指す考えである。同意取得のタイミングが限られるため、説明同意を取得可能な分担医を増やすなどして対応する。新型コロナウイルスの発生初期には迅速にPCR検査が行われないなどして感染の有無を確認するまでに時間を要する事例が続いたが、徐々に感染者の特徴が臨床的に判別可能になりつつあり、PCR検査も早急な対応が可能になりつつある。新型コロナウイルスの流行期のうちから安全に研究が遂行できる患者を選別して経験をすることで研究を推進する他、感染拡大が終息に向かうにつれてより多くの症例を登録できるように準備する考えである。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は、倫理審査申請やcase report formの作成、検体の収集等のスケジュール管理を確立するなど、事務的作業や実験開始のための環境整備に多くの時間を費やした。そのため、実験のための試薬等の使用量が予定より少なく経費に残額が生じることとなった。2020年以降は、登録症例数を増やしていく予定である。
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