研究課題/領域番号 |
19K09393
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北村 哲久 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (30639810)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 蘇生科学 |
研究実績の概要 |
本研究では、研究代表者が中心となって構築している救命センター等に搬送された院外心停止患者の多施設共同前向きレジストリを用いて、『心肺蘇生ガイドライン改定を見据えた院外心停止患者の高度集中治療と血液データの検証』することを目的とする。研究2年目となる令和2年度には、研究代表者ならびに研究協力者は、16施設から平成24年(2012年)~平成29年(2017年)までの12,270症例のデータセットを用いて解析を行った。 このデータセットを用いて、病院到着時に自己心拍再開がなかった非外傷性心停止成人患者5226症例を対象に、心肺蘇生中のLactate値と院外心停止発生30日後生存との関係を評価した。Lactate値が高ければ高いほど30日生存は低くなり、Lactate値が最も低い群と比較し、Lactate値が最も高い群の院外心停止発生30日後の生存は、0.24倍低いことを明らかにした。また成人心停止患者10,228症例を対象に、2013~2017年までの5年間において、治療内容や社会復帰が変化していたかどうかを経年的に評価した。観察期間中に、体外循環式心肺蘇生(ECPR)の施行割合は増えたものの(2013年2.4%から2017年4.3%)、社会復帰割合の改善は見られなかった(2013年5.7%から2017年4.4%)。 上述の2報告については論文として発表することが出来た。今後もこのレジストリを用いて、バイオマーカーや病院搬送後の院外心停止患者に対する高度集中治療の有効性についての様々な解析を実施する。その一方で、本年度の作成を予定していた2018年データセット構築に関しては、コロナ禍により総務省消防庁から提供される病院前救護記録の提供が遅れており、来年度の課題とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年から2017年までのデータセットを用いて、病院到着時に自己心拍再開がなかった非外傷性心停止成人患者5226症例を対象に、心肺蘇生中のLactate値と院外心停止発生30日後生存との関係を評価した。Lactate値を4分位にわけると、30日後生存割合は第1分位(=<10.6 mmol/L)は5.6%(74/1311)、 第2分位 (10.6-8211;14.1 mmol/L)3.6%(47/1316)、 第3分位(14.1-8211;18 mmol/L)1.7%(22/1292)、 第4分位 (>18 mmol/L)1.0%(13/1307)であった。Lactate値が最も低い群と比較し、Lactate値が最も高い群の院外心停止発生30日後の生存は、多変量解析による調整後で0.24倍低いことを明らかにした。また成人心停止患者10,228症例を対象に、2013~2017年までの5年間において、治療内容や社会復帰が変化していたかどうかを経年的に評価した。観察期間中に、体外循環式心肺蘇生(ECPR)の施行は増えたものの(2013年2.4%[44/1823]から2017年4.3%[103/2389])、30日後生存(2013年10.0%[182/1823]から2017年9.0%[216/2389])と社会復帰(2013年5.7%[103/1823]から2017年4.4%[104/2389])の改善は見られなかった。また、初期心電図波形(心室細動、非心室細動)、心停止原因(心原性、非心原性)、年齢(65歳未満、65歳以上)に分けたサブ解析においても、社会復帰の改善は見られなかった。 Lactateに関する研究はScientific Reports誌、治療と経年変化に関する研究はCirculation Journal誌にそれぞれ発表した。それゆえ、研究解析はおおむね順調に推移していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年4月現在、2018年に発生した大阪府下の救命救急センターからの約2500件のデータは既に集積しデータクリーニング済みある。しかしながら、総務省消防庁から毎年夏に提供される予定であった2018年の院外心停止患者の病院前救護情報が、令和2年2月から続く新型ウイルス感染症の蔓延に伴って、データ提供の目途が立っていない。院外心停止患者の社会復帰率は約3%に過ぎず、有効な予後因子の探索し、エビデンスを生み出すためには多くの症例を集積し続けることが重要である。それゆえ、申請中のデータが提供され次第、クリーニングならびにデータ結合を実施する。仮に提供が遅れて症例を追加した解析が実施できなくとも、現行データで約1万2千症例が登録されており、このデータセットをもってエビデンス創出は可能である。現在、この大規模データを用いて、院外心停止患者における病院搬送後高度集中治療の性差に関する疫学的特徴を評価する解析に加えて、その他のバイオマーカーについてのさらなる探索的な解析も行っている。さらに機械学習を用いてクラスタリング解析を行い、社会復帰に関わるグループを同定できるかという解析も予定している。 大阪府下で始まったレジストリは、2014年6月から日本救急医学会による学会ベースのレジストリに拡大し、全国レジストリとして約90施設から2014年から2017年までの症例約33,000症件が分析可能となっている。日本救急医学会とも連携を図りながら、様々なリサーチクエスチョンに対して多面的なアプローチも行う。その一方で、病院前救護における院外心停止患者の予後に関連する様々な因子についても多くの研究課題があり、これら研究課題についても集積されたデータ解析、論文化を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に投稿する予定の論文掲載料として約30万円分をまわすため。
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