研究実績の概要 |
本研究は、院外心停止患者の社会復帰率のさらなる向上を目指し、大阪府における救命センター等に搬送された院外心停止患者の多施設共同前向きレジストリデータベースを用いて、院外心停止患者の病院搬送後の体外循環などの高度集中治療の有効性検証ならびに予後と関連する血液データの探索的評価を行い、院外心停止患者の治療戦略の改善に寄与するエビデンスを創出し、心肺蘇生ガイドライン改定に貢献することである。 2012~2017年で大阪府下院外心停止患者12,594人を固定した。病院到着前の初期心電図波形が電気ショック可能な心室細動を持つ成人内因性患者1,169症例を対象に、機械学習による教師なし潜在性クラスタ分析を行った。開発データを用いて、共通の特徴を持つ3つの集団(サブフェノタイプ)が同定され、主に病院到着時の動脈血液ガス値であるPO2とPCO2、病院到着時の心電図波形、推定糸球体濾過量(eGFR)の分布によって特徴づけられた。院外心停止発生後30日生存率は、グループ1で15.7%、グループ2で30.7%、グループ3で85.9%であり、検証データにおいても同様の結果が観察された。 研究成果の学術的意義や社会的意義:機械学習クラスタ分析によって、危険因子や臨床的特徴、治療に対する反応が異なる表現型を持つ院外心停止患者の臨床的サブフェノタイプを特定することは、病院搬送後高度集中治療の効果の異質性を探ることに関連し、その死亡を下げる臨床応用につながる可能性がある。潜在性クラスタ分析はサブフェノタイプを特定するために多次元的な臨床因子を考慮できる点で優れている。本多施設共同研究は、病院到着前の初期心電図波形が心室細動である院外心停止患者のサブフェノタイプを評価した最初の研究であり、その臨床的特徴の同定は、院外心停止患者の予後改善のための高度集中治療の適切な対象者を検討する上で有用な可能性がある。
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