研究課題/領域番号 |
19K09395
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
阪中 雅広 愛媛大学, 医学部, 研究員 (60170601)
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研究分担者 |
朱 鵬翔 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (40380216)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 軽度外傷性脳損傷(MTBI) / 神経炎症 / 紅蔘 / 高次脳機能障害 / ジンセノサイドRb1 |
研究実績の概要 |
一昨年(令和元年度)は軽度外傷性脳損傷((Mild Traumatic Brain Injury, MTBI)モデルマウスを用いて、ジンセノサイドRb1(gRb1)を含有する紅蔘末(1%又は0.1%)のMTBI治療効果(高次脳機能障害改善効果)を検証した結果、高濃度紅蔘末(1%)の経口投与はMTBIモデルマウスの自発運動亢進を有意に抑止し、空間認知障害を改善する可能性があることが判明した。昨年度(令和二年度)はその治療効果を検証しなから、gRb1を含む紅蔘末の作用機構を調べた。MTBI後7日目、30日目と168日目のモデルマウスの脳を麻酔下で取り出し、損傷部位の特定と活性化したグリア細胞の分布をみるため、脳組織の連続切片を各種染色法で調べた。その結果、MTBI後7日目ではモデルマウスの脳組織には白質損傷と活性化したグリア細胞を広範囲で確認できたが、紅蔘末投与群とVehicle群には有意差がなかった。30日目でVehicle群と比べて、高濃度紅蔘末投与群でマウス脳内活性化グリア細胞の減少傾向が見られた。168日目(24週目)で、Vehicle群と比較して、高濃度紅蔘末投与群のマウス脳内活性化グリア細胞が有意に減少した。MTBI後168日目に脳内のPhospho-tauの発現をウエスタンブロッティングで確認した結果、偽手術マウスに比べてMTBIモデルマウス脳内Phospho-tauの発現増加が確認されるとともに、高濃度紅蔘末投与群マウス脳内Phospho-tauの増加の程度がVehicle群より有意に低かった。 これらの結果から、gRb1を含有する紅蔘末はMTBI後のグリア細胞活性化を抑止して、損傷した脳組織の神経炎症及び二次変性を軽減したと考えられる。また、gRb1を含有する紅蔘末の経口投与がMTBI後に脳内Phospho-tauの増加を減少することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度はgRb1又はその誘導体ジヒドロジンセノサイドRb1(dgRb1)をMTBIモデルマウスの静脈内へ長期投与して、その治療効果を確認する予定であったが、コロナ禍の中、マウスを用いた長期実験が予定より遅れて実施されたため、未だに進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
一昨年と昨年の研究結果を踏まえて、今年度はgRb1又はその誘導体ジヒドロジンセノサイドRb1(dgRb1)の治療効果(高次脳機能障害改善効果)とその作用機構を確認する予定である。ミニ浸透圧ポンプを用いて、gRb1又はdgRb1をMTBIモデルマウス静脈内へ長期投与した後、Open Field TestやMorris Water Maze Testなどの行動試験でマウスの活動性と空間認知能力を評価する。その後、マウス脳内の各種サイトカイン(IL-1β,IL-18,TNF-α等)をELISAて定量し、更には脳内各部位におけるcaspase-1などの活性化の程度をリン酸化抗体等を用いて経時的に調べる。 これらの結果から、gRb1とdgRb1がMTBIマウスモデルの神経炎症に及ぼす効果を明らかにして、高次脳機能障害と脳内炎症の関連性を推測できると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度はgRb1又はその誘導体ジヒドロジンセノサイドRb1(dgRb1)をMTBIモデルマウスの静脈内へ長期投与して、その治療効果を確認する予定であったが、コロナ禍の中、マウスを用いた長期実験が予定より遅れて実施されたため、未だに進行中である。予定していた免疫染色用の抗体、ELISA用キット購入費用及び電子顕微鏡使用料、動物飼育関連費用を今年度で使用する予定である。
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