研究課題
冠攣縮性狭心症は急性心筋梗塞発症や生命予後に関わる重要な疾患である。我々は心臓カテーテル法を用いて冠攣縮性狭心症の診断を行っているが、薬剤誘発冠攣縮試験陽性症例の中に冠攣縮性狭心症の明らかな危険因子がないにも関わらず重症の冠攣縮をきたす症例が存在し、原因が不明のまま薬物療法を継続していることがある。本研究では血糖変動と冠攣縮性狭心症との関連を明らかにし、危険因子として確立したい。それが可能となれば血糖変動を小さくするような食事指導、運動療法、薬物治療を行うことで冠攣縮性狭心症の発症を防ぐことができ、新しい治療戦略となり得る。さらに酸化ストレス、炎症、心臓自律神経機能、血管内機能、脂肪酸への影響を調べ機序の解明を図りたい。特に性差に注目したい。女性の性周期は自律神経状態に影響するため冠攣縮性狭心症患者の血糖変動と女性ホルモンの関係を明らかにする。我々は65歳以下の冠攣縮陽性患者24人と冠攣縮陰性患者100人の不飽和脂肪酸について検討し冠攣縮性狭心症患者ではDHA、EPAが陽性患者で有意に高いことを2019年9月に日本心血管インターベンション治療学会で報告した。また冠攣縮性狭心症と多価不飽和脂肪酸の関係における性差について検討し冠攣縮を認めた症例は冠攣縮を認めない症例と比較し男性はDHAが有意に高く、女性はアラキドン酸が有意に高くなっており、多価不飽和脂肪酸が冠攣縮の発症に影響を与える可能性があり、また多価不飽和脂肪酸と冠攣縮性狭心症との関係に性差があることが示唆された。このことについて我々は心臓に投稿し2020年8月号に掲載予定となっている。
2: おおむね順調に進展している
過去のデータを用い冠攣縮性狭心症と不飽和脂肪酸の関係を解析を行い冠攣縮性狭心症と多価不飽和脂肪酸の関係および性差について学会および論文報告を行うことができた。また、今後は冠攣縮性狭心症の発症に血糖変動が影響しているかについても解析を行っていることから、我々は順調に研究が進展していると考えられる。
今後は心臓カテーテル検査にて冠攣縮性狭心症の症例数を増やし、冠攣縮性狭心症と血糖変動との関係について解析を進めていく。
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Heart and Vessels
巻: 34 ページ: 9~18
10.1007/s00380-018-1213-6