研究課題/領域番号 |
19K09399
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
矢野 武志 宮崎大学, 医学部, 講師 (80521707)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 敗血症 |
研究実績の概要 |
敗血症とは感染に対する宿主生体反応の統御不全により臓器機能不全を呈している状態であり、さらに重度の循環・細胞・代謝の異常を呈するものは敗血症性ショックと定義される。敗血症のメカニズムは血管内皮障害を主体としている。細菌の毒素は血管内皮細胞上のToll-like受容体を介して細胞内炎症性シグナル伝達経路を惹起させ、炎症性サイトカインの分泌を促進する。過剰な炎症性サイトカインによって、血管内皮細胞はアポトーシスに至り、血管内皮がはがれて壁構造が破綻し、血管透過性亢進や凝固機能障害を招く。 血管が種々のストレスや傷害を受けた後に、修復および再構築することを血管リモデリングと呼ぶ。変質した血管リモデリングは、さらなる血管構造の破綻に繋がり、結果的に臓器障害を引き起こす。典型的な血管リモデリングは血管内皮の障害による炎症性変化を伴い、血管平滑筋細胞の遊走および増殖が刺激され、さらに脱分化が促進される。脱分化型血管平滑筋細胞は、血管壁肥厚や線維化、炎症性サイトカイン分泌などに関与し、マトリックスメタロプロテアーゼなどの機能性タンパク質とも相互作用する。 敗血症は全身性炎症を伴った疾患であるため、リモデリングは全身の血管で生じていると考えられる。敗血症診療に関連して、生存例における全身性の機能障害が問題となっており、ICU-acquired weakness(ICU-AW)や集中治療後症候群(Post-Intensive Care Syndrome: PICS)として、近年注目されている。研究代表者はこれらの病態形成に血管リモデリングが関与している可能性に着目している。本研究の目的は、敗血症性ショックの治癒過程で生じる血管リモデリングを証明し、血管リモデリングの結果として生じる血管機能障害を評価し、さらに有害な血管リモデリングを制御し得る新規治療薬を開発することである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
安定した実験方法の確立や実験機材および培養装置の整備に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
敗血症モデルである培養細胞および実験動物を用いて、生化学的および遺伝子学的実験を行い、敗血症に関連した血管リモデリングに関して、臨床応用を目指した検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費の使用が予定より少なく、また旅費にも予定額との差違があったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額を含めて、今後の実験に利用する物品や資料費、および旅費として研究費を使用する予定である。
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