実施概略:遺伝子改変マウスの作製と表現型に対する解析 目的:前年度までに得られたコクサッキーアデノウイルス受容体(CXADR)の病期に準じた発現に基づいて、血間内皮特異的CXADR欠損の心筋炎に対する効果および間質特異的CXADR欠損の心筋症に対する効果を検討することとした。 実施内容:当初、CXADR膜外ドメインの人工ペプチドを全身投与し、その効果を検討する予定であったが、適切な投与量の決定に難渋した。また、動物モデル、即ち実験的自己免疫性心筋炎マウスモデル(EAM)における検討において、病期によりCXADRの治療的効果が異なる可能性も示唆されたため、全身投与により治療効果検討は必ずしも適切ではないと判断し、遺伝子改変マウスを用いてCXADRのEAMにおける病理学的意義を検討することとした。EAM発症は、遺伝的背景により影響を受けるため、C57/b6背景のlopおよびcreマウスのbalb/c背景へのバッククロスが必須であり、この過程において多くの年月を必要とした。本研究期間内において、バッククロスは完了できなかったが、現在80%以上の遺伝子類似性は得られており、数か月で完成する見込みである。完成後、EAMを誘発し、心エコーによる心機能評価、病理組織学的に心臓組織炎症および線維化面積を評価し、さらに心臓再構築に関連した心筋細胞外マトリックス制御因子やコラーゲン分子、加えて心機能に関連したミトコンドリア代謝機構およびCaチャネルをRNA sequenceにて網羅的に解析する予定である。 意義および重要性:balb/c背景血間内皮特異的CXADR欠損および間質特異的CXADR欠損マウスを作製しEAMを誘発することで、心筋炎を基盤とした拡張型心筋症の新たな分子機序解明に繋がり、これまで標準的心不全治療に抵抗性の心筋症患者治療において有効な治療法の確立に大きく貢献できる。
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