研究課題/領域番号 |
19K09406
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
高須 修 久留米大学, 医学部, 教授 (90236216)
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研究分担者 |
平湯 恒久 久留米大学, 医学部, 助教 (00647745)
鍋田 雅和 久留米大学, 医学部, 助教 (20529523)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 敗血症 / 血管内皮障害 / 血管透過性亢進 / VEカドヘリン / 多血小板血漿 / 血小板由来小胞 / Angiopoietin-1 / 臓器障害 |
研究実績の概要 |
敗血症時に生じる制御困難な血管透過性亢進は、過剰な炎症反応の副次的結果というよりも臓器障害発症の主病態と理解されるようになった。本研究は、この背景にある血管内障害、特に隣接細胞間の接着装置と血管内皮表層に存在するグリコカリックス層の傷害に対する正の制御を、血小板血漿のmodulationにより目指すものである。初年度はC57BL6 miceとマウス肺静脈血管内皮細胞(MPLMEC)を用いて、以下の3項目を検討した。 1) 多血小板血漿からのmodulate溶液(PRP ext-P)の作成法:PRPを活性化することで血小板に内在する血管内皮恒常性維持に関わる複数の蛋白質を得ることができる。しかし同時に種々の血小板由来細胞外小胞体(EVs)も放出され、後者に関しては血管透過性亢進に対して正/負双方の制御因子として働く可能性がある。そこでEVsを除去したPRP ext-Pを2つの方法①超遠心法 ②サイズ排除型クロマトグラフィー法で分離・抽出し、抽出された蛋白量(A280測定)とAngiopoietin-1等の濃度を比較した。前者①は後者②に比べ約2倍程度の濃度を得ることができたが、②後者の方が蛋白分画とEVs分画を明確に分離採取可能であった。 2) トロンビン傷害MPLMECに対するPRP ext-Pの効果の検討:ECIS法/TEER(125kHz)で評価した。トロンビン添加によりTEERは漸減するが,トロンビン添加2,5,15時間後のPRP ext-p添加によりTEERが改善した。 PRP ext-Pは傷害された細胞間接着の修復に働くと考えられた。 3) 超遠心法により作成したPRP ext-Pのin vitro効果の検討:盲腸結紮穿孔モデル上で初回検討を実施した。血漿中のVE-Cadherin濃度の低下やSyndecan-1濃度の変化が伺われたが、投与量や経路等の検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、ほぼ予定通りに初回サンプルの作成および培養細胞上での機能評価を行うことはできている。 当初の計画では、血小板の刺激方法を、超遠心法以外に、トロンビン刺激やCaイオノフォアなど、活性化方法を変えた場合のサンプルの検討(サンプル中Angiopoietin-1濃度測定や培養細胞上の効果)・評価を開始する予定であったが、現在、刺激方法の調整中であり、若干の遅れを生じているものの、こちらも着実に進行できている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、in vitro, in vivo双方で、より効果的なPRP ext-Pの作成方法と、投与方法の改良と調整を検討する予定である。すなわち、現在血小板の刺激(活性化)は、PRPに対する超音波処理により行っているが、活性化の方法の変更(トロンビン刺激やCaイオノフォアなどの使用)により、機能の異なるPRP由来サンプルが得られると予測される。今度、活性化の変更により、より血管透過性亢進に対する正の制御に有効なPRP ext-Pが得られるものと考えられる。 一方、超音波刺激により作成したサンプルにおいては全てのEVsを除去したが、放出されるEVsの機能、すなわち血管内皮傷害に対して正あるいは負の制御を行うかは、その種類(大きさ:マイクロパーティクル、exosomes)や量、刺激(活性化)の方法で異なるものと考えられる。全てのEVsを除去するのではなく、血管透過性亢進に対し正の制御に働く因子を除去しないよう、より詳細にEVs側のサンプルの特性の分析を進める予定である。 さらに、サンプル調整およびin vitroでの効果の検討の後、マウス盲腸結紮穿孔モデル(腹膜炎モデル)上で、血管内皮障害抑制効果/障害作用を、①血漿中マーカーの測定 ②バイオインピーダンス法 ③病理組織学的検討 をすすめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度、概算の予算に対し94円の残金が生じたが、次年度の物品購入のための予算に繰り越して使用を予定とする。 次年度の予算に関しては、細胞外小胞分離のための各種物品(サイズ排除型クロマトグラフィー用カラムなど)、ECIS評価のためのチャンバーカセット、その他血漿マーカー測定のためのELISAキットなどの消耗品購入を予定している。
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