研究課題/領域番号 |
19K09408
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
山崎 悟 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (70348796)
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研究分担者 |
北風 政史 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (20294069)
塚本 蔵 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (80589151)
中谷 明弘 大阪大学, 医学系研究科, 特任教授(常勤) (60301149)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アセチルコリン受容体拮抗薬アトロ ピン / 迷走神経緊張 / 麻酔覚醒 / 洞性徐脈 / 瞳孔拡張 / 自然淘汰 |
研究実績の概要 |
救急医療において、ムスカリン性アセチルコリン受容体遮断薬アトロピンは、麻酔からの覚醒、心筋梗塞における洞性徐脈からの回復、あるいは眼科領域における、瞳孔散大による診断などの目的で広く使用されている。しかしながら、アトロピンは外因性の天然アルカロイドであり、生体内に代謝酵素は存在しない。それゆえアトロピンが上記の目的で使用された際に過剰に作用した場合、その作用をリバースするのは困難であり、副作用を効果的に抑える製剤の開発が望まれる。本研究では、ウサギに存在するアトロピンエステーゼの分子実態を、生化学およびゲノム・遺伝学的アプローチを用いて明らかにし、アトロピンエステラーゼ製剤開発への橋渡しを行うことを目的とする。本年度はウサギアトロピンエステラーゼ遺伝子の単離・同定を進めていくために、以下のようないくつかのアプローチを並行して行った。1つのアプローチは、アトロピンエステラーゼ活性を指標にした生化学的な方法を検討した。実験動物として汎用されているNWウサギはアトロピンエステラーゼの活性が高いことが知られているので、NWウサギの血清中に硫酸アトロピンを混和し、37℃で酵素反応を行った。続いて、溶液中で加水分解反応により遊離されるトロパン酸をo-ニトロフェニルヒドラジンで発色させ、産生された色素の吸収波長を測定することにより、エステラーゼ活性を測定することができた。別のアプローチとして、遺伝学的なアプローチを検討した。アトロピンエステラーゼ遺伝子座はEst-2F(および2f)がこれまでの知見で示唆されているので、まずはこの位置情報を指標にgenome情報を収集し、いくつかのマーカーのマッピングを行い、継承情報を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
候補遺伝子の絞り込みについては、分子実態はまだ特定できていないがおおむね計画通りに進めることができた。ウサギ血清の酵素活性については、血清の保存、酵素活性の条件設定に手間取ったが、エステラーゼと思われる活性を検出する系は何とか構築することができた。ウサギのデータについては、候補遺伝子座の情報を整理およびmappingを行うことにより、今後の足掛かりとした。
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今後の研究の推進方策 |
上記の課題をさらに進めるために、遺伝子の絞り込み方法として、ウサギの黒毛の遺伝子座Eの連鎖情報も使用しゲノム情報と併せることにより、分子実態特定への足掛かりとする。ウサギ血清の酵素活性についてはblue-native PAGEを併用して血清タンパクの分画を試みる。また、前年度から準備は行っているが、今後の研究計画のために、in vivoにおける評価系を樹立することを引き続き行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
“前年は遺伝子の同定作業に集中した為に予想されたよりも物品費の使用が抑えられ、その結果として次年度使用額が生じた。
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