脳動脈瘤の破裂は社会復帰率が約3割という悲惨な結末を招くため、脳動脈瘤の病態解明を推進することは喫緊の課題である。ビタミンDは筋骨格代謝、電解質調整において重要な役割を果たすが、その他にも多くの生理学的な役割を有し、免疫疾患、癌、糖尿病、血管病変など様々な慢性疾患と関連することが明らかとなってきた。我々は、ビタミンD欠乏が脳動脈瘤の破裂を増加させるという仮説をたて、先行実験でこれを明らかとした。本研究では、細胞特異的なビタミンD受容体(VDR)欠損マウスをマウス脳動脈瘤モデルに応用し、ビタミンD欠乏が脳動脈瘤破裂に及ぼすメカニズムを検証し、脳動脈瘤の発生及び破裂予防法の開発を目指す。 前期は(I)血管内皮細胞特異的VDR欠損マウス(VDRf/f Tie2Cre+)、(II)血管平滑筋細胞特異的VDR欠損マウス(VDRf/f SM22Cre+)の各系統を用いた脳動脈瘤モデル実験を行った。 今期は(I)血管内皮細胞特異的VDR欠損マウス(VDRf/f Tie2Cre+)、(II)血管平滑筋細胞特異的VDR欠損マウス(VDRf/f SM22Cre+)に引き続き、(III)マクロファージ(を含む単球系)特異的VDR欠損マウスを用いた脳動脈瘤モデル実験を行い、いずれの脳血管細胞が脳動脈瘤の破裂増加に関与するかを調べた。各実験でマウスよりウィリス動脈輪を摘出し、炎症性サイトカインの発現をRT-PCRで解析した。また遺伝子改変マウス繁殖と並行して、従来オスのみで実験を行っていたため、性差による影響を検証するためにメスの実験も同様に行った。
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