研究課題
ラット敗血症性モデルを用いたVA-ECMOの治療効果と体内各臓器への影響の評価、およびラット非閉塞性腸管虚血症(Non occlusive mesenteric ischemia、以下 NOMI)モデルを用いた腸管血流動態の解明を目的とした動物実験を計画し、2022年度まで継続して実施した。ラットモデルにおいて、インドシアニングリーン(Indocyanine green、以下ICG)を静脈内に投与し、小腸・大腸など腸管の他に肝臓、腎臓など各臓器を摘出し、 病理組織学的検索を行った。2023年度はこれまでの動物実験で得られた摘出検体および標本を用いて、病理組織学的検索を実施した。HE染色標本による通常光観察に加えて、ICG専用フィルター(OP-87767)を使用し、蛍光顕微鏡(KEYENCE BZ-X700)を用いた病理組織標本でのICG観察を行った。また、NOMIに代表される腸管虚血症(Acute Mesenteric Ischemia、以下AMI)を来した症例を後方視的に解析した。特にVA-ECMO導入中にAMI、NOMIを合併し、試験開腹術や腸管切除術を施行した症例においては、術中に腸管の虚血範囲の同定を目的としたICG投与を行い、切除範囲の特定を目的とした近赤外線観察を実施 している。これらのAMI症例について、切除腸管の組織標本を用いた病理組織学的検索により腸管壁の構造変化を明らかにし、ICG専用フィルターを用いた蛍光顕 微鏡察を行った。手術中の近赤外線観察による虚血評価の所見と病理組織学的検索結果との対比を行った。切除腸管の組織標本は検体処理の方法は統一されてい るものの、検体処理の開始時間などを均一にすることは困難であった。AMI症例の病理組織標本でのICGの分布や残存についても、動物実験によって得られた組織標本での検討結果を踏まえて検討を行う予定である。
3: やや遅れている
本研究が開始されて以降、研究期間内にCOVID-19感染症に伴う動物実験の遅れを生じたため、結果的に2023年度までの進捗としては遅れを生じている。
現在実施している敗血症性心筋症モデル、ラット非閉塞性腸管虚血症モデルを利用したVA-ECMO導入による腸管血流動態の解明および各臓器の病理組織学的検討を継続する。また、AMIに対して手術を実施した症例に関しても、病理組織標本でのICGの分布や残存について検討を継続する。
前年度までの研究の遅れを当該年度のみでは解消できなかったため、研究の延長申請を行った。このため、次年度使用額が生じている。
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